もの作りの大変さと喜び 桃山学院大学客員教授・門脇轟二氏③

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かどわき・こうじ 1942年生まれ。65年大阪外国語大学中国語学科卒業、本田技研工業入社。欧米など海外畑を歩み、98年に広州汽車と合弁設立した広州本田汽車有限公司の総経理就任。2000年には外国人として初の広東省労働模範に選ばれる。07年より桃山学院大学客員教授。

中国は人材異動が激しいといわれますが、広州本田の離職率は非常に低かった。家庭の事情や健康問題など、よほどのことがないかぎり辞めることはありませんでした。私がいつも社員へ問いかけていたのは「会社に入った目的は給料ですか?」ということです。もちろん給料は高いほうがいい。だがもっと大事なことがあって、入社して感じてほしいと話していたのは、もの作りの喜びです。結果、お客さんにも喜んでもらい、そこから働く充実感を得てもらえればいい。もの作りは人と人との連携で成り立っている。それを通じたコミュニケーションや協力、輪といったものが人生を充実させると考えています。

 現在、大学で教鞭を執っている関係で、日本の学生たちに車造り、ひいてはもの作りの大変さを知ってもらおうと、夏休みに中国の乗用車工場や部品会社を訪れる企業見学会を行っています。

若いときの体験はとても貴重

今年の夏、学生たちと武漢にあるホンダの乗用車工場へ行ったところ、たまたま部品の欠品がありラインが止まっていた。すると、工場の人たちが「申し訳ない」とえらく恐縮しましてね。だが、私にしてみるとこれ幸い。組み立てラインに近寄って車に触れられる距離で現場を見ることができたからです。学生たちもこんな近くで見られるとは思っていなかったようで感銘していました。

企業見学のプログラムは1年目に日本の自動車工場を見る。そして2年目は中国で語学研修と現場実習、3年目が中国企業見学です。日本では自動化から人が手を動かして作る工程がどんどん減っており、まるでプラモデルが組み上がるような雰囲気がある。それに比べて中国はまだ人間が関与する部分が多く、実際見る場所としてはとてもいいんです。

もの作りはすごく大変なことですが、それを裏返せば、出来上がったときの喜びもまた非常に大きいということを、若い人たちにぜひとも知ってほしい。今年は学生2名を日本人が1人もいない現地部品会社へ研修に行かせました。老板(社長)には事前に「学生をしごいてやってくれ」と。わずか2週間程度ですが、朝起きてから寝るまでずっと中国語の世界。もちろん現場の作業も同じようにやらせてもらった。最初は驚いて困ったようですが、帰ってきたらうれしそうにしていました。

若いときの体験はとても貴重です。少しでも彼らを刺激して、「俺も、頑張ってやってみようか」という気になってくれりゃ、しめたもんだと思っていますから。

週刊東洋経済編集部
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