新型コロナでも「普通の葬儀ができるはずだ」 ウイルス専門家の西村医師が現状を問題視

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――また、厚労省のQ&Aの下には、「感染症法に基づく消毒・滅菌の手引き」を挙げて、「エボラ出血熱参照」とあります。

エボラ出血熱は現在は「エボラウイルス病」と表記される。恐ろしい病気だが、空気感染はせず皮膚の傷口や粘膜を介した接触感染でうつる。この病気は症状としてここ数年までは体のあちこちからの出血が顕著だった。それなのに、アフリカではお別れに遺体にキスしたり、亡くなった人のからだを素手でさすったりと、風習上の問題が原因で感染が拡がった。新型コロナウイルスはこれとはまったく違う。画一的にエボラウイルス病の接触の問題をそのまま当てはめるのは適切ではない。

――イタリアでも亡くなった後に遺族が会えなかった、そのまま火葬場に持って行かれたということが問題になっています。

海外と比較して云々する報道が今回はこれ以外にも多いが、この問題に関していえば宗教上、文化上の違いもあり、比較しても仕方がないと思う。1918年のスペイン・インフルエンザのパンデミックでも国や地域によって違いがあった。感染管理上の問題がないのなら、日本は日本のやり方を考えてもよいはずだ。

「脅しすぎ」から「恐れすぎ」に

――葬儀業者は防護服を着ての霊柩車の消毒を行うなど、神経をすり減らしていると報道されています。

葬儀業者もある意味、「脅しすぎ」の犠牲者だ。そんなことまでする必要はまったくないと断言できる。前回もお話ししたが、例えば、一般社会においてエレベーターのボタンを直接指で押すことはやめましょうとか、しょっちゅうドアノブを拭きましょうとか、スーパーマーケットのプラスティックパックの表面をアルコールで消毒しましょうとか、今回の新型コロナはウイルスであるのに細菌であるかのように語られていることが多い。それが一億総強迫神経症のような混乱を引き起こしている。

いったい、どうやったら棺や霊柩車が感染を引き起こすほどのウイルスで汚染されるというのか。冷静に考えて理性的に物事を決めてほしい。

細菌はそれ自体が自立性の細胞なので条件が揃えばそれ自身で増えるが、ウイルスは細菌のように自立して増えることはできず、他の細胞、それもそのウイルスに適した極めて限られた種類の細胞に入り込まないと増えていかない。ウイルスは体の外に出た後もいつまでも生きているように言う人がいるけれども、それは大きな誤りで、外に出た状態にもよるが時間経過とともにどんどん失活していく。

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