新型コロナでも「普通の葬儀ができるはずだ」 ウイルス専門家の西村医師が現状を問題視

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西村秀一(にしむら・ひでかず)/1984年山形大学医学部医学科卒。医学博士。米国疾病予防管理センター(CDC)客員研究員、国立感染症研究所ウイルス一部主任研究官などを経て、2000年より現職。専門は呼吸器系ウイルス感染症。『史上最悪のインフルエンザ―忘れられたパンデミック』(みすず書房)、『豚インフルエンザ事件と政策決断―1976起きなかった大流行』(時事通信出版局)、『インフルエンザ感染爆発―見えざる敵=ウイルスに挑む』(金の星社)などの訳書や論文執筆多数。

遺体が咳をしたり息を吐き出したりするわけはないので、うつる心配はない。亡くなった直後に人工呼吸器を外すなどの過程で飛沫が体に付くことはある。だが、遺体を看護師さんがアルコール綿でていねいに拭いてあげれば何の問題もない。

遺体からうつることは考えにくいと言ったが、例外はもちろんある。例えば特殊な事情で遺体内部が腐乱してガスがたまって、それが吹き出すリスクがあるというのであれば、それは問題だ。最近、司法解剖がなかなかすすまないという話もあるが、そうしたことも理由のひとつになっているのかもしれない。

しかし、病院で亡くなってすぐの人についてはそんな問題はありえない。体内にウイルスが残っているから危ないという「専門家」がいるそうだが、それが肺からどうやって出てくるというのか。

お棺を開けて普通にお別れできる

――だとすれば遺族の気持ちから言っても、死者の尊厳という意味でも現在のやり方は改めないといけないですね。

そうです。遺族はもちろんのこと、病院にも動揺が広がっている。それまで頑張って病気と闘っていた患者さんへの敬意があり、看護師たちにはきれいにエンゼルケア(体の清拭、身なりを整えたり、メイクをしたりすること)をしてあげて見送りたいという気持ちがある。こうしたケアを普通に行って、家族の元にお返しすべきだし、葬儀でも顔を見てお棺に花などを入れて通常のお別れをすることはできる。

たとえ万が一拭き残しがあったとしても、遺体に触らなければ何の問題もなく、また手袋をしてその処置をちゃんとすれば触っても問題はない。そのくらいのことは常識ある大人なら理解できることではないか。

――インフルエンザではこんなことはしていませんよね。

新型コロナよりも怖い病気はいっぱいあるが、遺体について今回のような扱いはしていない。たとえば、多剤耐性の結核(薬の効かない結核)だとか、エイズだとか、肝炎で亡くなった場合でも今回のような指導はしていないし、それで遺族に感染したという話は聞いたことがない。新型のインフルエンザが出現したときもそんなことはやっていなかった。通常のインフルエンザでも毎年たくさんの人が亡くなっているが、そんなことはしていない。なぜ今回は別なのか。

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