コロナ大恐慌、日本を待つ4つの最悪シナリオ 日本の奇跡がリスクの先送りでなければいいが

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感染爆発と医療崩壊が同時に起こり、都市封鎖をやった国の多くは、セットで国民や企業に一時金を即座に給付した国が多かった。その点、日本は休業補償や一時給付金を出す、出さないで揉めたうえに、事実上の都市封鎖から2カ月目に入るというのに、ほとんどの国民は政府からの援助資金を受け取っていない。

雇用を維持した企業に対して給付金を出す予定になっている雇用調整助成金制度も、5月11日時点での相談件数は27万件、うち支給がきまったのは5000件しかない。

財政破綻の心配より国民の生命を

日本政府は、新型コロナウイルス関連に伴う給付金や助成金をさまざまな形で実施しようとしているが、正直言って大して役に立たない制度をずらっと並べただけで、「やってる感」を演出している場合が多い。簡単に列記しておくと――

<個人向け>
●特別定額給付金(国民一人当たり一律10万円)
●小学校休業等対応支援金(フリーランスや個人事業者向けに日額4100円を上限に支給)
●子育て世帯への臨時特別給付金(児童一人当たり1万円)
●住宅確保給付金(家賃相当額を一定期間支給する制度)
<企業向け>
●持続化給付金(法人は200万円以内、フリーランスや個人事業主は100万円以内)
●雇用調整助成金(事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、何かの方法で雇用を維持した場合、労働者一人当たり日額8330円などを給付)

巨額の財政赤字を抱える日本政府は、当然のことながらこうした財政支出を赤字国債の発行によって賄わなくてはならない。本来であれば、市中の投資家が日本政府の安全な国債を、こういう時こそ大量に買い入れてくれるはずなのだが、日本の場合はなぜか中央銀行の「日本銀行」が買い入れることになっている。

アベノミクスの一環として、日本銀行はこれまで年間80兆円を上限に購入してきたが、4月の金融策決定会合で80兆円の購入枠を無制限にした。今後、政府はどの程度の財政支出を迫られるかわからないが、すべて日銀が買い入れることも可能になった。

そういう意味では、緊急時であり非常事態だ。この時期に財政赤字がどうのこうのと言っている場合でもなかろう。国民の命や生活が危機にさらされているいま、200兆円だろうが、300兆円だろうが、まさに躊躇せずに国債を発行して使うことが求められる。

禁止されている「財政ファイナンス」を心配する声もあるが、パンデミック収束後に心配しても十分間に合うはずだ。問題は、政府が紙幣をガンガン印刷して、ヘリコプターからばらまくような政策をとったところで、それが経済の回復につながるかどうかだ。

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