コロナ激震地ロシアでプーチンがはまった暗路

75年前の戦勝の記憶は国民の生活を救えない

ロシア・モスクワの展示会場が臨時病院に様変わりしている。2020年5月11日(写真:REUTERS/Evgenia Novozhenina)

ロシアの新型コロナウイルス感染者の増加に歯止めがかからない。ここ最近は連日1万人を超える新規感染者を記録し、軍の内部にも数千人規模で感染者が出ている。新型コロナウイルス危機対策センターによれば、5月13日時点で国内感染者の累計は24万2271人、死者は2212人に達した。

ロシアは3月下旬に感染が少しずつ拡大し始めた時期にすべての航空便の国際線を原則停止するなど、迅速に先手の対応を取ってきた。モスクワ市においては外出を許可制とするなど、徹底的な外出制限措置も導入している。それにもかかわらず、感染者の爆発的な拡大を抑えられないでいる状況は、プーチン政権にとっては大きなストレスであろう。

そのような中、5月11日にプーチン大統領は、医療体制の強化により、ベッド数や人工呼吸器は十分な数があるとして、国全体の一斉休業期間終了を宣言し段階的に制限を緩和すると発表した。時期尚早とも思えるこの決断の背景には何があったのか。

テレビ会議に臨んだプーチン大統領、2020年5月11日(写真:Sputnik/Aleksey Nikolskyi/Kremlin via REUTERS)

プーチン大統領は、コロナ騒動のために、2つの大きな行事を犠牲にすることとなった。

1つは、4月22日に予定されていた憲法改正のための国民投票が無期限に延期されたことである。この憲法改正が成立すれば、大統領任期は通算2期までという制限が課されるはずだった。

現行憲法では、連続2期までとなっているので、間に他の大統領を挟めば、何度でも大統領になることができたが、それができなくなる。ただし、この規定は現職を含む過去の大統領経験者は計算されないとされており、現在4期目のプーチン大統領は、現在の任期が終わる2024年の後、さらに2期12年大統領になる道が開かれることになる。

プーチン政権の思惑は何か

プーチンは、大統領に就任した2000年以降、すでに20年以上もロシアを導いてきたわけだが、事実上の終身大統領になることも可能なはずだった。しかし、3月25日のプーチン大統領による国民投票延期の発表は、コロナに関する国民に対する支援策の前置きのような形で実にあっさりと簡潔なものだった。

犠牲となったもう1つの行事は、「偉大なる勝利の日」である5月9日の対独戦勝記念日に予定されていた軍事パレードである。軍事パレードの延期の発表は4月16日だった。

国民投票も軍事パレードも、コロナウイルスの感染防止の観点からは同様に避けるべき3密の行事であり、国民投票を延期した時点で、軍事パレードも併せて延期となってもおかしくなかったが、軍事パレードの延期決定はぎりぎりまで発表されなかったのである。

この2つの行事への対応から、プーチン政権の複雑な思惑が見て取れる。

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