中国では2020年1月から新型コロナウイルスの流行が拡大し、防疫用資材の不足を受けて複数の自動車メーカーがマスク製造に参入した。なかでも電気自動車(EV)大手の比亜迪(BYD)はマスクの製造装置を自社開発して大量生産に乗り出し、今や1日当たり2000万枚の生産能力を持つ。
新型コロナの流行が全世界に広がると、BYDには外国の政府や自治体からマスクの注文が殺到した。そんななか、同社がアメリカのカリフォルニア州政府から受注した総額10億ドル(約1070億円)の契約に予期せぬトラブルが生じている。BYD製の医療用高性能マスク「N95」がアメリカ国立労働安全衛生研究所(NIOSH)の認定を契約上の期限までに取得できず、州政府が支払った前払金の半分に当たる2億4700万ドル(約264億円)の返還に追い込まれたのだ。
「NIOSHの認定取得手続きを進めている最中だが、想定よりも時間がかかっている」。BYDの北米の広報担当者を務めるフランク・ジラルド氏は、財新記者の取材に対して事実を認めた。同氏によれば、通常の医療用マスクは契約通りカリフォルニア州政府に納入しており、N95も認定が下り次第納入するという。
5月末までに認定取得できなければ全額返還
一方、カリフォルニア側の契約当事者である州知事直轄の緊急サービス局(OES)は5月8日、財新記者の問い合わせに対して「防疫物資が不足するなか、BYDとの契約はうまくいっている。たくさんのマスクを予定よりも早く受け取った」と回答した。問題のN95に関しては、同州の納税者が基準をクリアしたマスクを購入できるよう、NIOSHの認定取得を契約書に明記したという。
アメリカ食品医薬品局(FDA)は5月7日、NIOSHの認定を取得していない中国製マスクに2回目の緊急使用許可を出した。FDAによれば、1回目の緊急使用許可を出した際には中国製N95マスクの一部に性能基準を満たしていないものがあり、許可を取り消してNIOSHの認定を義務付けていた。
BYDとカリフォルニア州政府の契約では、同社製のN95マスクが4月30日までに認定を取得できるよう州政府がサポートする一方、もし取得できなければBYDが前払金を全額返還することになっていた。だが両者は5月6日に契約を修正し、(BYDが前払金の半分を返還するとともに)認定の取得期限を5月31日まで延ばすことに合意した。それでも認定が得られなかった場合、BYDは前払金の残り半分も返還しなければならない。
(財新 駐ワシントン記者:張琪、記者:鄭麗純)
※原文の配信は5月8日
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