要するに、格差の度合いとコロナウイルスの感染拡大や死者数の間には、かなりの関連性がうかがわれるのだ(なお、意外に思う人もいるかもしれないが、日本は以前はこうした図の左のほうに位置しており、比較的格差の小さいグループに属していたが、90年代頃から徐々に格差が大きくなり、近年では格差の大きいグループに入っている。この点は後ほど立ち返りたい)。
このテーマ、つまり格差・貧困とコロナウイルスの蔓延や被害との関連については、例えばアメリカにおいて黒人層の死亡率が相対的に高い等といった一定の報道や指摘もなされているが、なお十分に認知されていない、しかし極めて重要な論点であると私は考えている。
「公共空間の全体」の劣化が招いた感染拡大
そもそもなぜコロナのような感染症拡大と貧困・格差が深く関わってくるかという点についてあらためて確認すると、格差や貧困が大きい国や社会においては、おのずと貧困層の生活環境が極めて劣悪となり感染症の温床となるという点がもちろんある。
しかし同時に私が強調したいのは、そのような国ないし社会においては、貧困層の居住地域のみならず、中間層も行き来するような都市の「公共空間の全体」が劣化していき、都市全体に感染症が拡大しやすくなるという点だ。
実際、私はアメリカ(東海岸のボストン)に3年ほど住んだことがあるが、都市の中心部やその近辺に、窓ガラスが破壊されたまま放置されていたり、ごみが散乱したりしているようなスペースがごく普通に存在するのをよく見かけていた。細菌やウイルスにとっては“格好の住処”になるだろう。
さらに加えて、これらの国々(アメリカ、スペイン、イタリア等)では公的な医療保険制度ないし社会保障が未整備で、そもそも医療保険に加入していない人々が多く存在することも、感染の発見そして治療の遅れを加速している。
私は医療政策や社会保障が専門領域の1つだが、イタリアやスペインは‟南ヨーロッパ型福祉国家”と呼ばれていて、その特徴は、公的な医療制度や社会保障制度が不十分で、よくも悪くも家族や地域(教会など)に依存する度合いが大きいという点である。
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