つまり現在の日本において進みつつあるのは‟東京一極集中”ではなく、むしろ「少極集中」と呼ぶべき事態であり、しかしこれは感染症の伝播という点ではかなりリスクの大きい構造であって、現にこれらの‟密”地域において感染が拡大した。
こうした構造を、より「分散型」のシステムに転換していくこと、具体的にはドイツのような「多極集中」と呼べる国土構造に転換していくことが重要であり、それはコロナのようなパンデミックへの対応においても極めて重要な意味をもつだろう。
加えて、ここで分散型システムというとき、それは以上にとどまらず、
を広く指している。
これらは、人口や経済が拡大を続け、“東京に向かってすべてが流れる”とともに、いわば“集団で一本の道を上る時代”であった(昭和・平成の)時代の価値観や社会構造からの根本的な転換を意味する。
同時にそうした新たな方向は、個人がのびのびと各々の創造性の翼を伸ばしていくことや、多様なライフコースを可能にするとともに、結果としておそらく経済や人口にとってもプラスに働き、社会の持続可能性を高めていくだろう。
「コロナ後」の社会構想の第一の柱にあるのは、そうした包括的な意味での「分散型システム」への転換なのである。
コロナの感染拡大と格差・貧困
以上、都市集中型から分散型システムへの転換について述べたが、同時に私がここで強調したいのが、今回のコロナウイルスの感染拡大と「格差、貧困」との関わりだ。
まず事実関係として確認したいのは、今回のコロナウイルスの感染拡大や被害をめぐる状況の国別比較である。
状況は刻々と変わっているので、ごく留保付きの指摘しかできないが、5月14日現在の時点において、とくに死者数が多いのが、アメリカ、イギリス、イタリア、スペインの4か国であることは確かな事実である(死者数は1位アメリカ[8.5万人]、2位イギリス[3.3万人]、3位イタリア[3.1万人]、4位スペイン[2.7万人]という状況。感染者数は1位アメリカ[143万人]、2位スペイン[27万人]、3位ロシア[24万人]、4位イギリス[23万人])。
ちなみに日本は死者数687人、感染者数1万6079人である。
実は、私はこの4国、つまりアメリカ、イギリス、イタリア、スペインに死者数および感染者数がとくに多いことは、ある意味で十分に予想されることと思ってきた。それは、これらの国々が、「格差」の面で世界で‟トップクラス“の国であることと関係している。
いくつかの国々のジニ係数、つまり格差の度合いを示す指数を比較すると、アメリカが筆頭であり、またイギリス、スペインやイタリアが上位に位置している。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら