そして、1番の問題は、これらの悩みに対して上司がうまくマネジメントできないこと。メンバーの顔も見えず、変化に気づきにくいのはもちろんだが、そもそも、営業プレーヤーとしてオンライン営業を経験したことのない上司が圧倒的に多い。これまでの訪問型の営業スタイルを持ち出してアドバイスをしても部下の悩みにフィットしないのだ。
メンバーからすれば、従来型のアドバイスしかできない上司に、「上司のあなたがまずオンライン営業をやってみてよ」と言いたいのももっともだろう。
訪問型の商談とオンラインの商談は、似て非なるもの
こうした悩みはなぜ起きてしまうのか。弊社が企業の営業組織をコンサルティングしている経験から言えば、「オンライン営業ツールを用意しただけ」になっているケースが多い。営業責任者や経営幹部は、コミュニケーション手段が変わるだけだと軽く考えていると危険だ。
なぜなら、訪問型の営業とオンライン営業は、まったく違うものだから。とくに「営業プロセス」「マネジメント」「スキル」の3つをオンライン営業に合わせて変えていく必要がある。
順を追って説明していこう。まずは「営業プロセス」。訪問型の場合は、「ごあいさつを兼ねてお伺いします」などときっかけをつくって客先へ出向き、その場でニーズをヒアリングしたり、商談を進めたりすることができた。いわゆる、自分たちから仕掛ける「PUSH型」のアプローチだ。
しかし、オンラインが前提になると、相手に明確なニーズがないとビデオでの商談にはならない。対面ではないからこそ、顧客にとっては“お断り”しやすい環境だ。となると、問い合わせを起点にした営業、いわゆる「PULL型」にシフトすることの重要性が増す。それに合わせたWEBマーケティングのあり方などの設計が極めて重要になる。この違いを理解しないまま漫然とアポ取りの電話をかけさせても、成果にはつながらない。
営業に求められる「スキル」も変わる。多くの人は営業職に必要なスキルとして「コミュニケーション力」を挙げるだろうが、それはどちらかといえば「相手の懐に入るのがうまい」「誰からも好かれる」といった人間力に近いイメージだった。
しかし、オンラインの営業においては、同じコミュニケーション力でも「目的・論点を明確にして商談を進める力」、いわゆるファシリテーションスキルや、資料を作成するドキュメンテーションスキルの重要度が増してくる。
画面越しの相手になんとなくの感覚で伝えたり、顔を見てパンフレットを指さしながら説明することもできない。対面で商談するときと同じ感覚で営業をしてもうまくいかないのだ。前提として属人化されていた営業プロセスの棚卸も必要だろう。
あるクライアント(大手IT)の事例をご紹介しよう。もともと外に出る営業部隊のフィールドセールスと、社内でのインサイドセールスに切り分けており、それぞれまったく別の人材要件で採用を行うほど、2つは異なっていた。
社内では、従来フィールドセールスのほうが主流だったが、オンライン営業が当たり前になったことで、その位置づけは逆転。営業のあり方を、かつてはフィールドセールスが耳も貸さなかったインサイドセールスのスタイルをベースに進化させ、この状況下でも150%以上大幅に業績が向上している。
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