その後も最大で月に1000万枚までの調達は可能という星川氏だが、マスクの販売を生業にするつもりはない。当初より国産マスク、とりわけ1枚あたりの単価がトリニティの調達価格よりも安いアイリスオーヤマの国産マスクが7~8月にフル稼働すれば、国内外合わせて月産2億3000万枚、国内だけでも1億5000万枚供給されるようになる。それまでの間、少しでも供給の手助けになれば……という気持ちで取り組んでいるという。
「“現時点でのマスクの原価”を知ってもらうことで、良心的な価格で提供されているマスクが高額で転売されることを防ぐ効果は期待できると考えました。現地工場での品質チェック、パッケージにして50万箱を通信販売で毎月発送するための人員確保、さらには受注用サーバーのコストなども考えれば、収支としてはつねにマイナスとなるため事業として継続する意味はありません。しかし、国産品が潤沢に流通するようになるまでの間、マスク生産の供給に少しでも貢献するため輸入販売を続けたいと思っています」(星川氏)
今後も同じ価格で販売できるのか?
一方、“原価で売る”という手法に対して、一部には中小企業の売名行為ではないかという声もあった。
「直接届いている声はほとんどがポジティブなものです。一部から“買えなかった”というお叱りも受けました。その点は反省し、ゴールデンウィークが明けてからの一般向け販売は抽選式にする予定です。我々としては、1日も早く必要な人にマスクが行き渡ってほしいと願っています。そうなれば、私たちも商戦期に向けて本業へしっかりと注力できます」と売り方を変えていくと話した。
さて、消費者としては、今後も同じ価格で購入できるのか気になる方もいるだろう。星川氏は原価が上がれば、その分、価格も上げるとしている。不織布の価格高騰が続けば、工場からの仕入れ価格も上がることになる。
「変動要素はマスクに使う材料のコスト上昇もありますが、実は中国からの貨物運賃が高騰しています。従来は旅客便の荷室の隙間を使うなどで早ければ翌日に到着していましたが、旅客便が飛んでいません。
そこで船便に流れているのですが、みんな一斉に船便に流れているため、船での輸送コストが上がっているんです。しかし為替が若干、円高方向になるため、6月分も同じ価格を可能な限り維持したいと思いますが、何よりも国産マスクの生産体制が少しでも早く立ち上がってくれることを願います」(星川氏)
この取材の後も、医療機関、公共施設などからの注文が引き続き入り続け、本稿が掲出される時点では1000万枚を突破した。まだまだ供給は追いついていない。彼が望むとおり、夏までに国産マスクが低廉に供給できる体制が整い、一連の混乱が収まってくれることを切に願いたい。
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