ミニシアター支援「3日で1億円」集まった背景 クラウドファンディングは芸術家を救うか

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モーションギャラリーは東日本大震災直後の2011年にサービスを開始した。当時は「100万円集まればすごい!というイメージ。クラウドファンディングの市場規模自体が大きく成長したと思う」(杉本氏)

今後、ミニシアターだけでなく、さまざまな分野のアーティストたちにクラウドファンディング活用の可能性があるだろう。成功の秘訣はどんなところにあるのだろうか。

代表の大高氏は次のように話した。

「モーションギャラリーで掲載するプロジェクトには、活動の物差しが2つあります。まず、売上、利益を増やす、という意味での『経済』、それから文化や社会、地域コミュニティーへの貢献度です。相反しかねないものを追わなければいけません。

【2020年5月1日8時40分追記】初出時、大高氏の発言内容の記載に誤りがありましたので上記のように修正しました。

経済的な価値だけを追求したいなら、出資や借り入れなど、資金調達をすればいいと思います。クラウドファンディングはお金を返すのではなく、気持ちを増やして返すもの。お金以外を追うためのお金をもらう場所です。そのスタンスを打ち出すことが、(ミニシアター・エイドだけでなく)プロジェクトの成功につながっていると思います」

ほぼすべてのミニシアターに声をかけた

政府に対しても、署名活動でアーティストへの助成や補助金支給を長期的に訴えていく。

「コロナを機に、分断がますます進むでしょう。分断は格差よりひどい、相手の立場にまったく立てない、それによって生まれているひずみを認識する共通言語がない、ということですから。映画にとっても厳しい世界です。人と人が集まって共通体験をすることも難しいし、そもそも撮影すら厳しいことがあるかもしれない。しかし、いかに分断から仮想、空想の連帯を作っていくことができるかが腕の見せ所かもしれません」(同)

「ミニシアター・エイドの本質として、何かの分断や隔たり、除外と離れた形にしたかった。例えばミニシアターの定義をして『これがミニシアター的である、これはミニシアター的でない』『親会社に資金力があるから外そう』といったこともやりませんでした。日本のほぼすべてのミニシアターに声をかけて、理念に対して賛同できるところに参加していただいた。

連帯されていなかった映画館をつないだ、感覚的な共感も得られたと思います。今後は、映画にとどまらず、いろいろな文化小劇場、ライブハウス、音楽、映画、演劇、文学の世界など、『優劣』ではなく『連帯』させていくような活動をしていきたいですね」(同)。

小劇場向けの「小劇場・エイド」や、書店を支援する「ブックストア・エイド」などのプロジェクトも、すでにスタート準備を進めている。

コロナという難局の中でそれぞれの分野をどう「連帯」させていくのか注目したい。

富谷 瑠美 香港在住コラムニスト

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とみや るみ / Rumi Tomiya

2006年早稲田大学法学部卒。アクセンチュアで全国紙のITコンサルティングを担当したのち、日本経済新聞電子版記者、リクルートグループの編集者を経て、子連れで香港に移住。Twitterはこちら。

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