ミニシアター支援「3日で1億円」集まった背景 クラウドファンディングは芸術家を救うか

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

4月16日には、安倍晋三首相が緊急事態宣言を全国に発令することを発表。各地のミニシアターはますます苦境に立たされている。ミニシアター・エイドは「最も厳しいであろう、4月からの3カ月間をしのぐ緊急支援策」(大高氏)だという。

ミニシアター・エイドは多くの映画人や一般の人々に支持され、開始から3日でコレクター(資金の提供者)の数は1万人超に。支援総額もわずか3日間で目標額だった1億円を突破し、モーションギャラリーによるとこれは日本のクラウドファンディングプラットフォームのなかで最速だという。目標額を3億円に引き上げ、5月14日までクラウドファンディングを続ける。

4月29日現在では総額2億円超、約1万8000人からの支援が集まっている。最速5月末には賛同したミニシアターに資金を配布するべく準備している。現在のところ、賛同したミニシアターは約111館。もし新たな目標金額の3億円が集まれば、1館あたり約270万円の支援金が行き渡る計算で、実現すれば政府の「持続化給付金(法人最高200万円、個人事業主最高100万円)」よりも高額になる。

「君の名は」の監督もミニシアターからデビュー

映画ライターで、かつてミニシネマの支配人も務めていた杉本穂高氏も、ミニシアター・エイドのコレクターになった一人だ。杉本氏はモーションギャラリーが立ち上がった当時からさまざまな映画プロジェクトを応援してきた。

ミニシアターの存在意義について「無名でも、稀有な才能を持つ新人監督を支えてきた屋台骨のような存在」(杉本氏)と話す。大規模シネマは、どうしても動員数が指標になり、利益を追求せざるを得ない。そのため中身より「売れるもの」優先の編成になりがちだ。しかしミニシアターはその館についている館主や編成担当が上映ラインナップを編成するため、館主が「この作品を見せたい、これを見せることに意味がある」と思えば編成に加わるという。それゆえ、新たな才能も発掘されていく。

大ヒット映画『君の名は』『天気の子』で知られる新海誠監督も、初めて制作した4分の短編映画『彼女と彼女の猫』を上映したのは下北沢のミニシアター「下北沢トリウッド」だったという。

その時の様子について、同館の支配人だった大槻貴宏さんはこう答えている。

「ある平日の夜、お客さんが一人しかいないことがあって、それが新海さん本人だったんですよ。そこで『本当にすごい作品だと思うけど、やっぱりこれ(客が彼一人)が現実だよね、観てもらわない限り、世の中にないのと一緒だよね』という話を2人でしました。そしたら今『ほしのこえ』っていう30分くらいのを作るということで、じゃあそれを上映しよう、ということになったんです」(「【中野人インタビュー】ポレポレ東中野 支配人 大槻貴宏氏」より引用)

新海監督ですら、デビューした当初は観客が彼自身のみ、という時代があった。それを支えるミニシアターの存在があったからこそ、成熟し、羽ばたくことができたと言っても過言ではないだろう。

大槻さんが支配人を務める「ポレポレ東中野」「トリウッド下北沢」はともに「ミニシアター・エイド」に参加している。

「日常が続いていくことが『文化』、それが続かなくなるという恐ろしさを感じます。そんな中で『ミニシアター・エイド』の取り組みは本当にうれしい。金額的な事もそうですが、これだけ多くの方が応援してくれているんだ、という思いを受け止めると、(ミニシアターを)継続する勇気が湧いてくるのです」(大槻氏)

次ページ「2つの物差し」追う人たち応援したい
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事