三陽商会、新社長が語る「万年赤字」の根本原因 投資ファンドとの委任状争奪戦にどう挑む?
――「再生の確信を持てた」とのことですが、三陽商会の強みは何だと見ていますか。
商品力だ。商品に対する強いこだわりがあり、ものづくりのノウハウがある。今の日本のアパレル市場を見ると、ラグジュアリーブランドを中心とした高級なマーケットと大衆向け低価格チェーンのマーケットの二極化が進んでいる。真ん中のゾーンにいた消費者たちは、価格訴求型の、より低価格の方向に流れていくことが多い。
こういった傾向の中で、三陽商会は高級に近いアッパーミドル(中間の上位)のゾーンで、しっかりとした品質のよい商品を開発していくべきだ。成熟した強い嗜好を持つ顧客向けのマーケットは必ずあり、その領域の供給者は減ってきている。そこで三陽商会は、一定のポジションを確立できると考えている。
売り上げ規模にこだわり過ぎた
――三陽商会は4期連続で大赤字です。大江新社長は4月14日の会見で、「売り上げ規模にこだわってきたことが赤字の続いた要因」と指摘しました。
バーバリーを失った後、極端に事業規模が縮小することに対する恐れがあったのだと思う。そのために一定規模の売り上げを維持することに必要以上にこだわった。
さらに、百貨店向けのビジネスは、「御用聞き営業」が基本的なモデルになっている。百貨店に気を遣って「一切欠品は出さない」という意識が強く、バックヤードにも店頭にも、ふんだんに商品を積んで販売する手法を続けてきたことも問題だった。
バーバリーは強いブランド力があり、大量投入してもなんとなく消化できていた。だが、バーバリー以外のブランドで同じように大量の在庫を抱えても、売り切ることはできない。商品が余るから割引セールを乱発する。それでも余った商品を翌年に持ち越しして、さらに安く売る。こういうことが繰り返された結果、(定価で売れた商品の割合を示す)正価販売比率が50%にも届かなくなり、粗利益率が下がる悪循環に陥っていた。損益に対する悪影響だけでなく、ブランドの付加価値も崩してしまっていた。
――再生プランでは、在庫の大幅抑制などを重点施策に掲げています。
現場と意思疎通を図りながら進めていきたい。ゴールドウインのときもまったく同じ経験をしたが、現場が一番保守的。過去のルーティンを変えることに対して抵抗がある。ただ、現場の人達は実際にやってみたことがうまくいけば、腹に落ちて納得する。そういう成功体験を少しずつ積み上げていくしかない。
仕入れやアイテム数を絞り込み、限られた商品群を売り切ることで利益を確保する意識を徹底することは、会社のカルチャーを変えていく作業になる。私は社外から来てフラットな立場で過去のしがらみも何もないので、強く言うべきところは言う。強制力を持って現場を動かす局面も出てくるかもしれない。
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