三陽商会、新社長が語る「万年赤字」の根本原因 投資ファンドとの委任状争奪戦にどう挑む?

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経営不振にあえぐ三陽商会は、ゴールドウインの経営再建に携わった三井物産出身の大江伸治氏に経営再建を託す(記者撮影)
「マッキントッシュ ロンドン」や「ポール・スチュアート」を展開する、名門アパレルメーカーの三陽商会。屋台骨だったイギリスブランド「バーバリー」とのライセンス契約が2015年に終了した後、その喪失分を他ブランドでカバーできないまま、2016年度以降、4期連続の最終大幅赤字にあえいでいる。
業績が上向く気配が全く見受けられない中、引責辞任した岩田功前社長の後を継ぎ、2020年1月には生え抜きの中山雅之社長が就任した。
ところが、5月26日に開催予定の株主総会を経て三陽商会のトップが再び交代する。中山氏はわずか5カ月で副社長に降格。代わって新社長となるのは、三井物産出身で、アウトドアブランド「ザ・ノース・フェイス」を展開するゴールドウインの副社長を務めた大江伸治氏だ。
大江氏はゴールドウインの経営再建に携わった後、2020年3月に副社長として三陽商会に入社した。50年近くにわたりアパレルに関わる仕事に従事してきた経験を生かし、4月14日に公表した「再生プラン」の下で三陽商会の再建を目指す。
ただ、三陽商会には5月の株主総会に向けて、さらなる波乱要因もある。三陽商会の株式を6%保有するアメリカの投資ファンド・RMBキャピタルが、マッキンゼー出身者の社長選任や中山社長の取締役退任などを求める株主提案を提出。三陽商会側は株主提案に反対する考えを表明しており、委任状争奪戦へと発展する可能性が高まっている。
三陽商会をどう再生に導くのか、そして株主総会を乗り越える勝算はあるのか。大江氏を直撃した。(インタビューは4月24日に電話会議形式で実施)

改革を進めれば、必ず再生できる

――突然の社長交代には、どのような経緯があったのでしょうか。

三陽商会の株主である三井物産を通じて、「三陽商会の経営再建に手を貸してもらえないか」という話をいただき、それを受けて3月に副社長として入社した。最初に話をいただいたのは2019年末くらい。その後何回か話をして、私のゴールドウインでの経験や知見を三陽商会の再建に生かせるのではないかと考えた。

入社して以降は、中山社長、事業本部長を務める加藤郁郎常務執行役員と一緒に再生プランの策定に関わり、複数の提言をした。

プランの遂行に当たって、私は(外部の知見を生かして経営の)指導を行う立場になることを想定していた。しかし、指名・報酬委員会から「改革を推進するには、私が社長の立場で陣頭指揮を執ったほうが効果が出るのではないか」と提言があった。三陽商会は非常に苦しんでいるが、持っているブランドの資産価値や商品力は高く、改革を進めれば必ず再生できる。そう確信を持てたため、社長を引き受けることにした。

ただ、社長になるにしても、私は三陽商会の現場を100%知っているわけではない。現場と意思統一をして、現場の末端まで確実に一丸となるためには、私と中山、そして加藤を中心としたスリートップ体制(5月の株主総会後、社内取締役は大江氏・中山氏・加藤氏の3人となる予定)がベストだと判断し、今はプランの実行に着手した段階だ。新型コロナウイルスの影響が広まり、プラン策定時には予測していなかった状況もあるが、ダメージコントロールを行いながら、計画した事業構造改革を粛々と進めていく。

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