「女性リーダーの国」がコロナを抑え込む理由 敵はウイルスだけではなく「内なる感情」だ

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女性らしさ、男性らしさといった言葉は好きではないが、ジェンダーの枠を超えて、強さと優しさをベストマッチした女性リーダーが成功するということであろう。

そういった視点で見ていくと、コロナ対策に成功しているといわれるニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相(39歳)、台湾の蔡英文総統(63歳)、ドイツのアンゲラ・メルケル首相(65歳)、フィンランドのサンナ・マリン首相(34歳)、アイスランドのカトリーン・ヤコブスドッティル首相(44歳)、ノルウェーのアンナ・ソールバルグ首相(59歳)、デンマークのメッテ・フレデリクセン首相(42歳)、すべてが、まさにこの資質を満たしていることがわかる。

彼女たちの的確な対応の要因の1つに、リスクに対するとらえ方が挙げられる。例えば、ニュージーランドのアーダーン首相は「We must go hard and go early(厳しく早く)」あるべきと唱え、断固たる処置を一刻も早くとるという姿勢を堅持してきた。ドイツのメルケル首相も、物理学者の経験を生かして「科学の声」に耳を傾け、徹底した検査と行動制限で感染者数の抑え込みに成功している。

男性のほうが女性より、リスクの高い行動に出やすいといわれるが、このコロナ問題についても、女性のほうが男性よりはるかに心配をし、予防行動に出ていることがわかっている。男性の中には、「男らしさ」とはウイルスという敵を恐れず、戦い抜くことで、外出しないという選択肢は負けを認めること、ととらえるマッチョな人も、ごく一部にいる。

初期対応を誤り、「消毒薬を注射すればいい」など数々の虚言・妄言をはき続けるアメリカのドナルド・トランプ大統領や、外出制限にデモ活動を行う人々、一切の対策を拒否するブラジルのジャイル・ボルソナロ大統領など、とくに強硬な保守層ほど、リスクを軽視し、科学を無視する傾向もある。リスクの受容度の違いが感染抑止の取り組みに影響を与える側面はあるだろう。

コロナ禍で発揮された女性リーダーたちの共感力

さらに、女性リーダーに共通しているのは際立ったコミュニケーション力だ。男女のコミュニケーションの特質的な違いについては、拙著『世界一孤独な日本のオジサン』に詳述しているが、とくに大きく異なるのが共感力だ。数々の研究から、女性のほうが、人の感情を読み取る、感情を表現する力が高いという結果が出ているが、人の気持ちを察し、同情する、悲しみや不安に寄り添うといった言動にためらいがない。

彼女たちは軒並み70%、80%台の高い支持率を得ているが、これだけの信頼を得ている理由として、この危機の特殊性もあるだろう。(仮想)敵国を叩くことで、「ゼロサムゲームを勝ち抜くのだ」と奮い立たせるようなレトリックはこのウイルスとの戦いでは役に立たない。

敵は見えないウイルスだけではなく、人々の恐怖や孤独、不安という内なる感情でもある。その痛みを感じる想像力、寄り添い、勇気づけ、たたえ、励ます共感力が求められるということだ。つながりを渇望する国民は女性リーダーの優しく力強い言葉に、「そうそう」「それそれ」と背中の痒い所をかいてもらうがごとく、感情のツボを刺激されてしまう。

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