衆院静岡補選、自民圧勝に安堵した意外な人物 岸田氏は「ポスト安倍」に踏みとどまったのか

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二階幹事長は「事前になんの相談もなかった」(二階派幹部)と不満を隠さず、一貫して一律10万円給付を主張し続けた公明党も「無視された」(幹部)と反発。これが、二階氏と公明党の強い方針転換要求による前代未聞の補正予算案組み換えにつながった。まさに「10万円政局での岸田氏の大逆転負け」(自民幹部)だった。

異例の閣議決定やり直しについて、安倍首相は4月17日の記者会見で「もっと早く決断すればよかった。混乱を国民にお詫びしたい」と珍しく反省と謝罪の言葉を口にした。

ところが、安倍首相が方針転換した16日夜、岸田氏はツイッターで、「(10万円一律給付は)自民党としても当初から訴えてきた」と発信し、これが「なんという無責任」などとネット上で炎上した。与党内からも「釈明のつもりかもしれないが、だったら最初から官邸を説得すべきで、政治家としての覚悟がない」(公明幹部)と批判された。

次の狙い「家賃支援」に動く

こうして「針のむしろ状態」(自民幹部)だった岸田氏だけに、静岡補選圧勝は「干天の慈雨」(同)ではあった。失地回復のきっかけをつかんだ岸田氏は第2次補正予算案策定での指導力発揮に意欲満々で、狙いを定めているのが家賃支援だ。コロナショックで収入が落ち込んだ事業者の家賃支援を2次補正の目玉にすべく積極的に動く構えだ。

岸田氏はすでに、西村康稔経済再生担当相と家賃支援について協議する一方、自民党の政調幹部らに「シンプルでわかりやすい仕組みにしてほしい」と指示している。野党側も家賃支援で政府系金融機関が賃料を立て替える案などを検討しており、岸田氏は自らが主導する形で与野党調整を進めたい考えだ。

ただ、26日午前のNHK国会討論会で、与野党政策責任者が家賃支援を議論した際、岸田氏は野党の具体的要求に対して「(野党の要求も踏まえて)政府与党として、現実的な制度設計を念頭に調整したい」と慎重な物言いに終始した。これについて自民党内からは「チャンスだからもっと踏み込めばいいのに」(自民長老)との声も出た。

27日に国会提出された補正予算案は、休日返上の審議で30日午後に成立する見通しだ。その直後から家賃支援も含めた第2次補正予算案の策定作業が始まるとみられる。「政府与党の調整で二階氏や麻生氏らを押しのけて存在感を発揮できなければ、(岸田氏の)失地回復は無理」(自民若手)との厳しい声もあり、岸田氏の正念場はまだまだ続きそうだ。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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