子の幸せを願う親に知ってほしい「教育の本質」 親ができることは「選択肢を与える」ことだけ

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(写真:Fast&Slow / PIXTA)
新型コロナウイルスの問題をはじめ、変化の全く読めない時代を私たちは生きています。このような有事にこそ、社会を生き抜く力を子どもたちに与える必要があり、それが教育の目的の一つでもあります。
『「教える」ということ』の著者で立命館アジア太平洋大学(APU)学長・出口治明氏が「今、親が考えるべきこと」について解説します。

先日、ある講演の質疑応答で、参加者の女性から、「私は今36歳です。この時期に読んでおいたらいい本があればご紹介ください」という質問を受けました。

僕の答えは、こうです。

「何でもいいんです」

なぜ、何でもいいのかといえば、興味のない本を読んでも頭に入らないからです。

最近の研究では、「最高の先生が最高の授業をしても、聞いている学生が興味をもっていなかったら、単位を取った後は授業内容をほとんど忘れてしまう」という結果が出ているそうです。

僕が続けて、「どんなジャンルに興味がありますか?」と聞き返すと、彼女が「神話とか民話など民族文化に惹かれます」と答えたので、僕は『世界の神話』(沖田瑞穂 著/岩波ジュニア新書)と、『石の物語』(ジン・ワン 著/法政大学出版局)の2冊を紹介しました。

「好きこそものの上手なれ」で、どれほどいい本を薦めても、本人に興味や関心がなければ、身につかないのです。

興味のあることは忘れない

教育においても大切なのは、学生や子どもが潜在的に持っている興味や関心を引き出すことです。

先生が「試験に出すから、覚えておくこと」といえば、学生は嫌々ながらしかたなく勉強をする。ですが、試験が終わって単位が取れたとたんに、すぐ忘れてしまいます。興味のないことは、覚えにくく、すぐに忘れますが、興味のあることは、覚えやすく、なかなか忘れません。それが人間の頭の構造なのです。

僕自身がそうでした。学生時代の僕は本ばかり読んでいて、勉強はほとんどしなかったので、成績も悪く、どちらかといえば劣等生でした。

僕は好き嫌いが激しくて、おもしろくない講義は出席もせず、興味深い授業だけ聴いていました。好きな科目は「優」をもらいましたが、おもしろくない講義は、「良」と「可」ばかり。落第さえしなければいいと思っていたので、おもしろくない講義には身が入らなかったのです。

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