4月20日時点で、中国主要自動車23グループの完成車工場が生産を再開しており、稼働率は昨年平均の約8割まで回復した。東風日産に供給している部品・部材メーカーは中国国内に1080社あるが、うち湖北省にある168社の大半が生産を再開した。天津市に立地する一汽トヨタのサプライヤー358社がすべて生産再開し、一汽トヨタの工場稼働率は4月9日に117%に達した(人民網報道)。
日本企業のサプライチェーン戦略の難題
新型コロナウイルスの感染拡大により、中国に依存するマスク・部材などの供給が滞り、日本企業のサプライチェーンの脆弱性が露呈した。日本政府は4月7日、緊急経済対策を発表し、特定国の生産設備の国内移転に伴う生産拠点の国内回帰やアジア諸国などへの多元化を促進しようとしている。この政策はサプライチェーンの中国依存からの脱却を目指すものと捉えることができる。
2017年末時点で、中国に進出した日系企業は32,349社と、2015年のピーク時と比べて約1000社減少したものの、海外に進出した日系企業全体の約43%を占める規模だ(外務省発表)。低コストを活用した製品の生産・輸出、現地市場向けの販売は主な進出目的である。
自動車の需要地で生産する「地産地消」は業界の共通戦略であるため、自動車部品の海外生産も求められる。現在、日系サプライヤーの生産拠点は主にアジアに集中しており、特に中国は多く、海外拠点全体の約3割を占めている。
日系自動車メーカーが立地する広州・天津・武漢、協力企業(裾野関連)が集積する上海・蘇州周辺地域が主な進出地域である。設備・物流、部品・部材販社を含む日系サプライチェーンと地場・外資系サプライチェーンが複雑に絡み合っており、中国で日本車500万台規模の生産を支えている。
JETROが実施した中国華南・華東地域の日系企業調査をみると、新型コロナウイルス問題をきっかけに、約1割の日系企業が中国以外の国への業務移管を検討しているとされる。サプライチェーンが特定国に集中するカントリーリスクを勘案すれば、中国で輸出業務を中心とする日系企業は「チャイナプラスワン」を検討する必要があるだろう。
一方で、中国市場への依存度が高い日系自動車関連企業にとっては、コスト上昇や競争激化をはじめとする不安定要素が増加している中、中長期的なアジア・中国戦略の策定が迫られている。
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