朝ドラ「エール」に音楽好きが注目する理由 コロナ禍を癒やす「ライブ朝ドラ」の可能性

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刑部芳則『古関裕而』に戻れば、このような軍歌/戦時歌謡を多く作曲した「罪」によって、古関裕而は戦後、戦犯になるかもしれないと恐れたという。

軍歌/戦時歌謡の量産から、終戦、そして戦犯への恐怖を経て、初回に警備員として登場した萩原聖人によるセリフの中で語られた平和賛歌『長崎の鐘』に至る心理的経緯をどう描くかに注目したい。そのダイナミズムがリアルに描かれるのであれば、朝ドラ『エール』は限りなく成功に近づくだろう。

ヒロイン・音を演じる二階堂ふみ

2つ目の期待は、女優・二階堂ふみの起用である。本原稿は、1週目から3週目まで見終わった段階で書いているが、古山裕一(石田星空→窪田正孝)を軸とした1週目と3週目よりも、関内音(清水香帆)が軸となった2週目に、より魅力を感じた。

また、原始時代に始まり、ミュージカル調の演出まで取り入れた自由奔放な初回(抑制的で硬派な作りだった前作『スカーレット』の残像を振り払おうとしているように見えた)における二階堂ふみが実に魅力的で、このドラマとの相性のよさを感じさせた。

つまり、朝ドラ『エール』は、関内音(二階堂ふみ)の物語になるのではないかと見るのである。

一昨年の6月に本連載に寄稿した「川栄李奈が『CM女王』以上の女王になる希望」で私は、女優界の「大谷翔平世代」に注目した。1994~95年生まれの同学年である二階堂ふみ、松岡茉優、川栄李奈、清野菜名たちである。

その中でも、最も進境著しいのが二階堂ふみだ。映画『リバーズ・エッジ』(2018年)やNHK大河ドラマ『西郷どん』(2018年)、そして何といっても昨年の映画『翔んで埼玉』における「壇ノ浦百美」の鬼気迫る演技によって、「大谷翔平世代」の中でも頭一つ抜け出した。

二階堂ふみについては、演技力や外見だけでなく、その内面も魅力的である。『NHKドラマ・ガイド 連続テレビ小説エール Part1』(NHK出版)において彼女は「今回、朝ドラのヒロインオーディションを受けたのは、沖縄戦を体験している自分の祖母をはじめ、その時代を生きた人たちの思いを大事にしたい、という気持ちが自分の中で高まっていたというのが理由のひとつなんです」と語る。

また「過去の朝ドラの中でも私は『カーネーション』が好きで、たくましく生きる主人公に励まされていたんですけど、きっとどの時代でも、女性はそうした強さを持っていたはず」とも語っている。これらの発言から感じるのは、二階堂ふみの視野の高さと深さだ。

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