《中国・アジア市場攻略》パナソニックの本気示すドブ板調査、3・5億世帯を狙い農村向け専用製品開発へ

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 この低所得層の大部分は農村。生活研のメンバーが訪れた2カ所もこの層が多い典型的な村だった。

現地ニーズ対応で勝負 販売戦略の再構築も

中国では今年に入って農村部の家電購入を支援する「家電下郷制度」が導入された。政府が認定した商品の購入には補助金が支給される。対象製品には価格上限が設定されており、パナソニックで認定を受けたのは洗濯機とエアコン、電子レンジの一部製品のみだった。これらは農村部向けに開発した製品ではなく、既存製品で認定価格をクリアしたものにすぎない。

家電下郷の補助でパナソニックも一定の恩恵は受けているものの、既存製品では差別化要素も少なく、より低価格なローカルメーカーに太刀打ちできないでいるのが現状だ。中でもハイアールは家電専門店などが存在しない内陸部の街まで販売網を整備し、シェアを拡大している。

今後、本気でボリュームゾーンを狙うにも、価格だけの勝負ではローカルメーカーに勝ち目は薄い。「最低限の低価格条件をクリアしたうえで、現地のニーズをとらえた製品を投入すれば勝算はある」(三善所長)。

そこで出番となるのが、消費者の実態調査からニーズを掘り起こし、ヒットを飛ばしてきた生活研だ。

07年に投入したスリム冷蔵庫。生活研の調査で冷蔵庫をリビングルームに設置しているユーザーが多いと判明。数百世帯のキッチンを計測した結果、キッチンのスペースが問題であり、従来機より5センチメートル幅が小さい冷蔵庫ならほとんどの家庭でキッチンに置けると突き止めた。こうして開発されたスリム冷蔵庫の投入で、販売数量は前年の7倍にハネ上がった。

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