アメリカで広がる「抗体検査」はどんなものか 明らかに怪しい検査キットも少なくない

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感染率がここまで低いとなると、抗体検査の有用性はさらに限られる。現在の抗体検査では、実際には抗体がなくても抗体があると表示される偽陽性率がかなりの水準に上るからだ。

FDAの承認を得たセレックスの抗体検査ですら偽陽性率は約5%と、相当な誤差がある。オスターホルム氏によれば、5%の誤差というのは、人口の5%がウイルスに感染した地域で抗体検査を行ったら、それと同じくらいの偽陽性が出ることを意味する。

信じられる検査はどれか

FDAの承認なしで市場に出回っている検査キットの中には、偽陽性率がさらに高い製品が含まれているのは間違いない。これらの企業が検査キットの有効性をどのように検証したのか、またどのように他社と性能比較を行っているのかも不明だ。

目下、アメリカ国立衛生研究所(NIH)の研究者がFDAと協力して検査キットの検証作業を進めている。少し前にデンマークの研究者グループが9つの検査キットについて小規模な分析を公開したが、それによると予想にたがわず製品によって検査結果の信頼性に差があることがわかった。

フェイスブック創業者夫妻の慈善団体、チャン・ザッカーバーグ・イニシアチブの後援を受けた研究グループも、市場投入された検査キットの検証作業に取り組んでおり、近く一次結果が出る予定になっている。

「検査キットのうち、どれが信頼できるかを明らかにすることが急務だ。直接の比較試験を行う以外に、その方法はないと思う」と、同プロジェクトで幹部を務めるカリフォルニア大学サンフランシスコ校の微生物学者、アレクサンダー・マーソン博士は言う。

「勝者(となる検査キット)を1つ選び出すのではなく、できるだけ多くの勝者が見つかれば理想だ。そうなれば、世界には多様な選択肢が手に入る」と博士は付け加えた。

(執筆:Steve Eder記者、 Megan Twohey記者、Apoorva Mandavilli記者)
(C)2020 The New York Times News Services

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