アメリカで広がる「抗体検査」はどんなものか 明らかに怪しい検査キットも少なくない

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連邦政府の指針があまりにも複雑だという問題もある。自らに検査の実施権限がないにもかかわらず、それと知らずに検査を実施してしまっている医療関係者が出てきているのだ。中には、感染の初期段階を見逃している可能性に気づかず、抗体検査の結果を誤って診断に使っているケースもある。

「抗体検査がどれほど危険か、人々は理解していない」と、ミネソタ大学の感染症専門家、マイケル・オスターホルム氏は指摘する。「スピード優先で品質を犠牲にしているが、人命がかかっている場合には、スピードよりも安全性が優先されるべきだ」。

必要量検査できるほど数がない

政府機関や企業、研究者らが既存の検査を検証し、よりよいものを作ろうと躍起になっているものの、評判どおりの成果があがるかどうかは疑わしい。現在利用可能な検査の多くでは、抗体がないのに抗体を持っていると誤って判断されてしまう人が少なくとも何人か出てくる。そうした人々の間で、自分には免疫があるという危険で誤った考えが広まる可能性があるということだ。

たとえ検査キットが改善されたとしても、供給不足の問題は残る。新型コロナのウイルス検査も製造能力がネックとなり、必要なレベルにまで実施規模を拡大することができていない。

トランプ大統領が経済活動の再開を迫り、いくつかの州が数週間以内の封鎖解除を検討しているため、大規模検査の重要性は増している。トランプ氏は17日、FDAがいくつかの抗体検査を緊急承認したことを称賛し、こう述べた。「これですばらしくすてきな免疫を獲得しているのが誰かわかるようになる」。抗体検査が経済再開の助けになるというわけだ。

疫学者らは感染の規模をより正確に測定しようと、感染が集中する「ホットスポット」で抗体検査を進めている。政府も抗体検査の結果に基づき、人々を日常生活に復帰させる時期と方法を決定する考えだ。だが多くの科学者や政治家が指摘するように、現在のアメリカは、必要とされる量とスピードでウイルス検査や抗体検査を十分に展開できる状況にはほど遠い。

「検査を増やせば、経済活動もそれだけ多く再開させられる」とニューヨーク州のクオモ知事は15日に語った。同知事は自宅待機制限を緩和する計画において中心的な役割を担うものとして、抗体検査の増産を強く求めている。ニューヨーク州では最終的に1日10万人の検査を行う予定だという。

だが、アメリカ各地の実施状況からは、さまざまな問題が浮上してきている。例えば、シカゴでは救急隊員が新型コロナに感染しているかどうかを判断しようと抗体検査を行った病院に対し、市の公衆衛生局が抗体検査をやめるよう警告した。

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