アメリカで広がる「抗体検査」はどんなものか 明らかに怪しい検査キットも少なくない
4月に入ってからFDAは、アメリカで抗体検査キットを販売する企業の中に、正式にFDAの承認を得ているとか、新型コロナの感染を診断できるなどといった虚偽の宣伝を行っている会社があると警告した。
アクセスを迅速化しようとするあまり、FDAは検査の実施方法を十分に考慮していなかったようだ。FDAはガイダンス文書を公開し、「ポイント・オブ・ケア」の環境で抗体検査を実施できるとしている。これは医師や看護師などが診療所や診察室で検査を行い、その結果を知らせることができることを意味する。
しかしFDA当局者は、連邦法の下では、検査がFDAによって承認されていない場合、大規模な民間検査所や公衆衛生研究所といった設備の整った専門の施設でなければ検査を実施できないとも認めている。当局者はそれ以上の詳しい説明を避けた。
「あなたが抗体検査を受けるとしよう。それが医師の診察室で行われるとしたら要注意だ」と公衆衛生試験所協会で感染症プログラムを率いるケリー・ロブレウスキー氏は言う。
新型コロナ感染者は人口の5%程度
まだ医師に対する措置が取られたことはないが、FDAガイドラインの曖昧さに気づいて、軌道修正を図る会社も出てきた。ラボの検査に軸足を移したり、診察室や家庭での使用が可能となるように正式なFDA承認の取得を目指したりする動きだ。
抗体検査キットの開発企業120社がFDAに緊急の使用許可を申請しているが、現時点で正式な承認を獲得しているのは、セレックス、オーソ・クリニカル・ダイアグノスティックス、チェンビオ・ディアグノスティクス、マウント・サイナイ・ラボラトリーの4社にとどまる。
政府関係者や一部の保健当局者が封鎖解除には抗体検査が不可欠と発言しているが、その期待にすぐに応えられる可能性は低いということだ。
オスターホルム氏によれば、アメリカで新型コロナに感染したと見られるのは人口の5%にも満たない。ニューヨークやニューオーリンズといったホットゾーンですら、有病率は10~15%未満ではないかという。中国でも、感染の震源となった武漢で早期に行われた検査では、新型コロナの抗体を持っているのは人口の約3%にすぎないという結果が出ている。