アメリカで広がる「抗体検査」はどんなものか 明らかに怪しい検査キットも少なくない

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ある検査ラボは、アリゾナ州の法律事務所の従業員に抗体検査を提供した後、他の顧客への即時検査の提供を中止し、より精緻なラボでの検査に切り替えた。連邦政府の指針に抵触するリスクを恐れたためだ。

テキサス州ラレドでは、検査がひどく不適切なものであることが当局により明らかとなった。地元の保健当局によれば、この検査の信頼性は、企業が主張する93〜97%には遠く及ばず、20%程度にとどまっていた。警察による捜査が行われた後、この検査キットは連邦政府に押収された。

緩い規制、ウソだらけの検査キット

FDAが規制を緩和し、連邦政府の正式な審査や承認なしに抗体検査を販売することを許可して以来、90社を超える企業が市場になだれ込んだ。

その中にはスタートアップもあれば、実績のある企業もある。これらの企業に対しFDAは、3月16日発行のガイダンス文書の中で、企業が自ら検査結果の検証を行い、同局に報告するよう求めた。

製品は種類も質もさまざまだ。最も信頼性が高いのは、酵素免疫測定法(ELISA)という検査法を伴うもので、患者が持っている可能性のある抗体の分量を示すことができる。一般には抗体が高レベルであれば免疫応答も強いと考えられるが、新型コロナから回復した患者が免疫を得ているかどうかについては研究者の間でも確証はない。免疫獲得に必要な抗体レベルや、免疫の持続期間も明らかになっていない。

「まだまだ、先は長い」とオスターホルム氏は言う。「9イニングの試合でいえば、まだ第2イニングにすら到達していない状況だ」。

現在行われている抗体検査の大半は、医師の診察室で結果を判定できる即時検査で、結果は単純に陽性か陰性かで示される。最終的には自宅でも検査できるようになるという。検査キットメーカーは企業や医師の売り込みに力を入れており、何千人というアメリカ人がすでにこうした検査を受け、1人あたり60~115ドルの費用を支払った形になる。

簡単に実施できるという点では即時検査にかなう検査法はない。だが他の検査法に比べると信頼性は大きく見劣りする。そのため世界保健機関(WHO)もこれら即時検査キットの利用は推奨していない。

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