医療従事者の「悲痛すぎる声」が映す崩壊の現実 人も資材も設備も限界、差別という非道な例も

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コロナ対応で明らかになってきた「医療現場の困憊」。その背景について全医労の香月直之委員長は、医療に向ける予算を削りに削った結果だ、と判断している。全医労は国立病院で働く医療従事者らの労組であり、香月委員長は対面取材の中でこう指摘した。

「例えば、結核の病床はこの10数年で、半分以下になっているわけですよ。いま、全国で1700床くらいです。予算の問題(で削減された)。やっぱり各地に感染症センターみたいなものを作って、感染症の拡大に対応できる設備を持った病棟や訓練された職員を配置しておくべきなんです。少なくとも各都道府県に国立でその機能を持たせた施設を作り、普段から(結核なども含め)治療を止めない、と。そして今回のように、いざというときは、いつでも動ける。そういうものが必要です」

全医労の香月直之委員長(手前)。前園むつみ書記長(奥)は、現場の看護師らが置かれた状況を丁寧に説明してくれた(撮影:フロントラインプレス)

「全医労は長年、それを求めてきました。そして、全国の国立病院が独立法人化されたとき、『国立は感染症対応』をやっていく、そういう患者さんを積極的に受け入れていくことになっていた。それが、お金がない、背に腹は代えられないとなってきたわけです」

パンデミックの際に感染防止の最前線となる医療現場に対し、厚生労働省はずっと“合理化”を求めてきた。2019年9月には、地域医療構想推進を名目に「具体的対応方針の再検証を要請する」として、424の公立・公的病院名を公表した。多くの医療関係者はこれを「再編・統合の示唆」と受け止めている。2020年1月には追加・修正があり、対象病院数は約440に膨らんだ。労組側によると、対象として名指しされた病院の中には、新型コロナウイルスのような感染症に対応する「感染症指定病院」が24病院も含まれているという。

各地の消防署や自衛隊のように「感染症センター」も

香月委員長は言う。

上の画像をクリックすると、「コロナショック」が波及する経済・社会・政治の動きを多面的にリポートした記事の一覧にジャンプします

「考え方として、国立の病院は(緊急時の対応として)あれやこれをやりなさい、と命じられる。独立行政法人として、ちゃんと役割を果たせ、みたいなことを言われるんです。例えば、北朝鮮からミサイルが飛んできたときはこう、大地震が来たらこう、とか。ところが、それにつながる財政的な裏付けはなく、ずっと(予算を)切られてきた」

「ずっと政府は『危機管理が重要な柱だ』と言ってきました。消防署があったり自衛隊があったり、それと同じように感染症のプロが配置されていることは決して無駄じゃない。今回のコロナ問題では、その必要性が改めて見えてきたんだと思います」

取材:当銘寿夫ほか=いずれも「フロントラインプレス(Frontline Press)」

Frontline Press

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「誰も知らない世界を 誰もが知る世界に」を掲げる取材記者グループ(代表=高田昌幸・東京都市大学メディア情報学部教授)。2019年5月に合同会社を設立して正式に発足。調査報道や手触り感のあるルポを軸に、新しいかたちでニュースを世に送り出す。取材記者や研究者ら約40人が参加。スマートニュース社の子会社「スローニュース」による調査報道支援プログラムの第1号に選定(2019年)、東洋経済「オンラインアワード2020」の「ソーシャルインパクト賞」を受賞(2020年)。公式HP https://frontlinepress.jp

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