医療従事者の「悲痛すぎる声」が映す崩壊の現実 人も資材も設備も限界、差別という非道な例も

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厚生労働省内で開かれた医労連の記者会見=4月7日(写真:医労連提供)

実際、4月7日の会見用に作成された「訴え」には、各病院の厳しい状況やスタッフの悲痛な声が80項目近くも並んでいる。いくつか紹介しよう。

・一般患者として初診で来た患者が、後日PCR検査が陽性であることが判明。患者は自宅管理。問診に当たった看護師が、後日、咽頭痛ありPCR陽性となり自宅待機。外来、入院も、新規救急患者受け入れを中止(通院中の患者の緊急は受け入れ)。
・スタッフの感染が確認された大学病院より医師らが当院に来ることができず、形成外科など手術を延期。その他内科などの医師も数名自宅待機を命じられている。
・「院内非常事態宣言」発出。血液疾患やがん等の免疫不全患者が多数入院していることから、外部からの重篤なコロナ患者は受けない。

医療スタッフの状況はどうか。「訴え」を続ける。

・多くの病院と職場でマスクが決定的に不足している。「1週間に1枚」と指示されている病院もある。
・業務に必要なマスクも個人で用意するよう指示されている。
・マスクは古い物と交換で支給するとか、1週間はガーゼのみ交換をして同じものを使ってというところもある。
・人員不足の中で、スタッフは重症化した患者を看るということには大きな不安を感じている。
・国立病院は有給の「特別休暇」で対応するなどしているが、そもそも必要最低限の職員配置となっているため、「休みたくても休めない」実態となっている。
・休校措置により少ない人員がさらに減っている。
・田舎の病院だが、地域唯一の感染症指定病院のため、日々増える検査対応に追われ、休みがない状況。これ以上増えてくると対応が追いつかない。
医労連がまとめた「訴え」(撮影:フロントラインプレス)

「訴え」には、医療スタッフに対する“差別”も記されている。

・転勤職員、引っ越し業者から断られた。職員の夫が勤務する会社が、夫の出勤を停止。子供の保育所から通園を拒否される。
・現場では自分が感染するのではないか、家族にうつすのではないかと不安の中で勤務している。
・帰宅してもばい菌扱いされ、精神的にも休息できる場がない。
・感染者が出たことで、病院近くの保育園が閉鎖された(感染した職員が子どもを預けていたということではなく、単に病院が近いということ)。その後も保育園からは、病院職員の利用を自粛してくれとの要請があった。
・面会禁止が長引いて、患者から苦情を直接ぶつけられ、ストレスが大きい。

医療機関の“合理化” 近年の政策で矛盾激化

新型インフルエンザ等対策特別措置法(特措法)の第12条は、関係機関と連携して新型インフルエンザ等の対策について訓練するよう、指定行政機関の長に努力義務を課している。新型コロナウイルス自体は3月13日の法改正でこの法律の適用対象となった。

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