同社の石川鋼逸社長は、肉が美味しくなる秘密についてこう説明する。
「熱伝導率がよく蓄熱温度が高いという鋳物の強みを最大限に生かすため、焼き面を厚くしています。高級な鉄板焼店ほど鉄板は厚い。たくさん試作しましたが、やはり厚いほど美味しくなるんですよね」
同商品は3.5~4mmの厚さを実現しているため熱伝導率が高く、肉は早く柔らかく焼きあがり、うまみが逃げにくいという。
とはいえ「世界一」を掲げれば、おのずと消費者の期待値は上がる。実際に使ってみてガッカリする人も一定層出そうなものだが、「『焼いた肉がまずかった』といった苦情は1件もありません」と石川社長は話す。
「女性でも扱いやすいこと」を追求した点も、支持を得る理由の1つかもしれない。昨今、鋳鉄フライパンは1kgを切る軽めのものが人気だが、鋳鉄は厚くするほど重くなってしまう。だが、肉を美味しくするために、厚さは譲れない。
そこで、同社が考えたのは、取っ手の設計を工夫して使用感を向上させること。取っ手の長さや握りやすさを検討し、取り付け位置の角度は1mm単位で調整。軽量化と同時に見栄えも重視し、穴のある意匠を採用した。こうした試行錯誤の末、20cmタイプが1.2kg、26cmタイプが1.8kgとそれなりに重量があるものの、重さを感じにくいデザインにたどり着いたという。
長年の職人技術により実現した「無塗装」
もう1つ、特徴的なのは「無塗装」である点。一般的にフライパンは、テフロン加工など何らかの塗装がされている。鋳鉄製も美観や防錆の目的で、表面を削り塗装が施されているものが多い。しかし、塗装がはがれてくると買い替えが生じたり、塗装材から有害物質が出たりといった話もある。熱伝導率を下げる要因にもなるという。
その点、同商品は高い精巧さが要求される自動車部品製造で培った技術力を背景に、表面を滑らかにすることに成功し、無塗装を実現している。これにより、「安心安全」や「空焼き不要」といった付加価値をつけることができた。
最終仕上げには独自の熱処理を施し「油なじみがよく、錆びにくく焦げにくい」(石川社長)ようにした。実際、ファンであるyuus_12さんは、毎回料理前に行うよう推奨されている油返しを「使い始め当初以来行っていないが、とくに問題はない」と言い、同商品の油なじみのよさがうかがえる。
同社は材料の調達から製造、販売、商品発送まで一貫して自社で行う。完全なる国産商品である点も響くのか、30~50代の男女が購買層の多くを占めている。自宅使いのほか、アウトドア料理のニーズもある。20cmタイプを購入した後、鉄板タイプや26cmタイプを追加購入するケースが多いという。
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