地方の医師が訴える医療現場の切迫した危機 物資不足やオンライン診療など課題は多い

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診察が必要だと判断した場合は、病院の外に置いたプレハブ内にパソコンを置き、zoomを使用して問診をしています。それでも直接的な身体診察が必要と判断した場合には僕たちのチームでみて、診断がつき、入院が必要な場合は、入院担当の医師にお願いしています。

本来、オンライン診療はセキュリティの高いアプリなどを入れて、患者さんが自宅から病院につなぐものです。ただ、導入に際して時間もないので、使い慣れているものを利用し、セキュリティ面に関しては患者さんにご理解いただき、同意書を書いていただいています。(長期戦に備えては、セキュリティの高いアプリの導入も検討中です。)

高齢者へのオンライン診療をどうするか

また、ITリテラシーが高いわけではない地域のおじいちゃんおばあちゃんにデバイスの操作をお願いするのは難しいので、とりあえず病院の駐車場に来てもらってプレハブの中のパソコンに向き合ってもらって診療をしています。これがましな方法だろうと思ってやっています。

ちなみにプレハブ会社に2、3社にあたったところ、医療機関に貸したくないということでしたが、古いリースのものだったらいい、と。それを病院の営繕担当が改修して1週間ぐらいで設置しました。自分たちの感染リスクに対するストレスも減りますし、防護服の使用頻度も少なくなります。

ですが、救急医がいる病院は少なく、こうした体制変更ができている病院は多くはありません。

――救急医がいると、緊急時のプロジェクトマネジメント能力の高さが発揮されるということでしょうか。

そうですね、それはあります。あとは、国際医療福祉大学の志賀隆准教授が、ダイヤモンド・プリンセス号で感染者が出た頃に、救急医や総合診療に携わっている医師を中心に情報共有するSNS上のグループをつくってくださっていたことも大きいです。そこから情報を得ていたので、危機意識を高く持てましたし、手立てを考えることができました。

ただし、救急科専門医の資格を持つ医師は日本で5000人ほどしかいません。ダブルライセンスで資格を持っているだけという先生方もいるので、救急医として実働している医師は全体の半数ほどだと思います。緊急性がそこまで高くない重症患者を受け入れる2次救急病院には救急医がほとんどいないのが現状です。

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