地方の医師が訴える医療現場の切迫した危機 物資不足やオンライン診療など課題は多い
――他にも医療機関の臨機応変な対応を可能にする要因はありますか。
やっぱり私立病院は対応のスピード感が違います。公立病院だと稟議をあげて、どこの業者をいれるのかという議論に時間がかかると思います。あとは、危機感のあるリーダーがいるかどうかは大きいと思います。
僕らは100万円かからない範囲で先述のような対応をしてきました。家で眠っていたパソコンを持ってきたり、大型ホームセンターなどにあるもので代用がききそうなものを探したりと工夫をしているため、そこまでお金はかかっていません。
また塩田病院は300床ほどの比較的小さな病院ですが、大きい病院であればあるほど専門科ごとにセクションが分かれるので、院内でも専門科によって感染症対策に対する温度差があると思います。
感染者疑いで救急搬送が困難になる患者も
――病院側からすると、通常外来で新型コロナウイルスが疑われるような症状の患者さんを受け入れることはやはり難しいことなのでしょうか。
実際に、コロナウイルスではない患者さんに対しても受け入れ困難事例が発生しています。
つい先日も40代の男性の救急要請がありました。突然の頭痛が主訴で救急車を呼んでいるのですが、熱が出ているからという理由で、近隣の救急対応をしている病院数ヶ所から受け入れが難しいと言われ、救急隊から当院に連絡がありました。
50分ぐらいかけてうちの病院に搬送されて、防護服を着て救急車内で診察にあたりました。「突然発症の頭痛+人生で一番の頭痛」という主訴もあったため、CT(コンピュータ断層撮影法)を撮ってみると、やはりくも膜下出血でした。
緊急で手術をしないといけないのですが、いつも受け入れてくれる病院からは、「肺のCTを撮りましたか」と聞かれました。通常なら聞かれることはありませんが、仕方なく追加で検査をしました。撮ったCT画像に異常はなかったのですが、それでも受け入れは難しいと言われてしまいました……。
結果的に、また1時間ぐらい離れた脳外科の病院に搬送することになりました。
こうした感染者疑いで医療にアクセスしづらくなっている人がいることも知ってもらいたいです。
ただし、その患者さんが最初に断られたエリアは、もともと救急医療体制が脆弱でした。そこにコロナウイルスの影響があいまって拍車がかかったとも言えます。他にも精神疾患を持っていると断られる確率も高くなるなど、日本の救急医療体制の課題も見直さなければなりません。