地方の医師が訴える医療現場の切迫した危機 物資不足やオンライン診療など課題は多い

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――報道と現場のギャップを感じたということでしょうか。

主な情報源としてテレビがありますが、常時コメンテーターとして出ている医療関係者は現場にいない人が大半です。僕がいるのは田舎の病院でまだ大きな波がきていないので余裕はありますが、都内の現場の医師は発信している余裕はないでしょう。なので、コメンテーターの先生が話していることと、現場で働いている僕らの認識にも乖離があると感じます。

一方で、僕ら現場の医師は病院の事務方から、コロナウイルスの話題はSNSなどで発信するなと言われるところもあります。僕は、自分の家族や友人など大切な人たちに医療現場の声を知ってもらい、意識してもらいたいと思って発信をしていますし、幸い当院の院長もそれを承諾してくれています。

これも内容の公開や拡散は禁止されていますが、県からはPCR検査で陽性でも自宅待機を余儀なくされている人の数などが送られてきます。その数字をみていると、各都道府県で隔離用の部屋の確保などが追いついていないことが分かりますし、自治体も困っていると思います。まさに2ヶ月前のアメリカみたいな感じです。

日本の場合は海外からの報告をもとに対策を練る時間があったはずなのに、医療現場が先回りして体制を整えられていないことがものすごく残念です。

軽症患者の自宅待機を推奨している理由

――動画では軽症患者には自宅待機を呼びかけていますが、軽症患者が病院に来るとどんな問題が生じるのでしょうか。

軽症患者であっても感染が疑われる患者さんの対応をする際には、僕らは防護服で対応することになります。防護服などの使用頻度が高まると、いざというときに不足してしまうかもしれません。そうなると手術用の衣服を使用せざるを得なくなり、通常行っている手術が後回しされてしまうこともあります。

それから今、いちばん避けたいのは院内感染です。院内感染が発生すると今まで提供できていた住民への「普通の」医療の提供が止まります。

僕が勤務する病院では、地域内の夜間休日救急当番の約9割を輪番担当していますが、院内感染が起きるとそれもできなくなります。そうなれば、うちに来る患者さんが近隣の3次救急病院(もっとも緊急性の高い重症患者を受け入れる病院)にいくことになります。

ですが、もともとうちの病院で受けていた患者さんをその病院がすべて受け入れることになったら、疲弊してしまいます。

これは僕らの地域だけの話ではなく、多くの地域が同じような危機に直面しています。

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