経済危機で新卒採用を減らした100社リスト リーマン・ショック前後でどう変化したのか
新型コロナウイルスの感染拡大により、雇用環境の悪化が懸念されている。すでに、リーマン・ショック時のように内定取り消しの事例も発生している。では、直近の景気後退局面だったリーマン・ショックは、大手企業の採用にどのような影響があったのだろうか。
東洋経済オンラインでは、当社『就職四季報』で独自に調査したデータを用いて、2008年9月に発生したリーマン・ショック前後で修士・大卒の採用実績を比較した。今回は、2009年入社(2008年に内定)、2010年入社(2009年に内定)、2011年入社(2010年に内定)の3年の新卒採用者数を集計した。
表は、3年すべての調査に回答のあった772社を対象にしたもの。2009年4月入社の新卒採用者数が多い企業から順に、上位100社の推移をまとめた。
2009年と2011年を比較した採用増減率も併載している。社名は『就職四季報2009年版』当時のもので、一部企業の新卒採用数はグループ合計の回答となる。
2009年入社と2011年入社の100社の合計採用数で比較すると、2万3791人から1万5491人へ8300人(約35%)採用数を減らしたことがわかる。採用を停止したり半減したりする企業がある一方で、採用数を増加させた企業も10社あった。
リーマン後は輸出産業で大幅減
個別企業の採用実績をみると、2009年時に新卒採用者数が881人だった大和証券グループは、2011年には平均を上回る45.4%減の481人に採用数を減少させた。2位の三菱電機の採用数は770人から710人で、平均の減少率より少ない7.8%の減少にとどまった。
この期間に特に新卒採用を抑制した企業は、システムエンジニアリング会社で住商情報システムと合併し現在はSCSKとなったCSK(採用中止)、自動車部品メーカーの矢崎総業(89.2%減)、スーパーの平和堂(89.0%減)。逆に採用を増加させていた企業には、サカイ引越センター(44.9%増)、川崎重工業(41.1%増)、大垣共立銀行(18.1%増)などがある。
業種別でみると、自動車関連や電子部品などの輸出比率の高いメーカーが平均を上回る減少となる一方で、通信サービスや建設業、食品・水産業では平均以下の減少率にとどまった。
リーマン・ショックでは、リーマン・ブラザーズ・ホールディングスの破綻を発端に、アメリカで多額の不動産ローンを抱える個人の消費が急速に悪化した。日本でも、まずアメリカの不動産ローンを組み込んだ債権を保有する金融機関に影響を及ぼしたほか、その後はアメリカへの輸出比率の大きな製造業などに多大な影響を与えた。
これに対して、今回のコロナウイルスの感染拡大では、まずは海外からの渡航規制で観光などのインバウンド需要が低迷。緊急事態宣言で外出の自粛が呼びかけられていることから、小売業や飲食店などでも資金繰りに苦しんでいる。表を参考にする際には、リーマン・ショック時と影響を受けている業種には違いがある点に注意が必要となる。
リーマン・ショック後は雇用環境の改善までに1年程度の時間を要したが、今回のコロナショックも終息が見通せない状態が続いており、年単位で長期化も懸念される。ただし、リーマン・ショック時と同様に、インフラ関連や食品・水産業など需要が安定している企業では採用を維持できる可能性があるほか、成長中のIT企業ではこの機会に採用を増やす企業もあるだろう。志望する業界の事情を研究し、就職活動に備えることが必要だ。
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