「これで少し安心できた。従業員を路頭に迷わせるのが一番つらい」。香港島で飲食店を営む男性は、給料の50%を6カ月補助する政府案に胸をなでおろしている。3月5日に開始された「防疫感染基金」第1弾も利用し、20万HKD(約280万円)の補助金は受け取り済み。しかし1度だけの支給では、2019年夏に始まったデモに続くコロナ禍には十分な額ではなかった。
第1弾の補助金は3月5日に補助金をオンラインで申請したところ、3月16日には携帯のSMSメールで承認通知が届き、その日付で政府機関から補助金の小切手が発送された。2~3日後には手元に届いたという。香港はイギリス領の名残で小切手文化が残っているが、銀行に持ち込めばすぐに換金できる。
人件費と家賃に苦しむ日本の飲食経営者
一方、日本ではどうか。複数の支援策が発表されているが、それぞれの支給要件が細かく、手続きも煩雑だ。支給までの時間もかかる。例えば緊急経済対策の特例として「雇用調整助成金(休業手当を中小企業向け最大90%、大企業向け最大75%助成)」が発表されたが、当初は必要書類が10種類以上、支給までおよそ2カ月と「支給されるまでにキャッシュアウトしてしまう」(都内の飲食店経営者)。もっとも、この点は4月13日以降、記載事項を5割ほど削減し、1カ月後の支給を目指すなど改善がはかられている。
4月末に詳細が発表される「持続化給付金(中小企業に最大200万円、個人事業者は最大100万円)」はこの点を改善し、オンライン申請で2週間以内の支給を目指すが、売り上げが前年同月比で50%以上減少している必要がある。
日本の飲食店経営者からは、人件費と家賃の補償を望む声が多く挙がる。東京・銀座で寿司屋を営む税所伸彦さんは4月から店を自主休業した。飲食店に対して「営業は午前5時~午後8時、酒類提供は午後7時まで」とする都の要請に従えば、夜の銀座で売り上げを保つことは難しいからだ。東京都の「感染拡大防止協力金(単独店舗50万円、複数店舗100万円)」もあるが、適用対象となったとしても1カ月分の諸経費にも満たない。「諸外国のように、賃金の何%を補償するのがフェアだと思う」と話した。
表参道と麻布十番でビストロを経営する中尾太一さんも同じく休業を決めたが、高額な家賃が重荷に。ただでさえ、東京五輪を控えて都内の賃料は高騰していた。大家にも減額を交渉したが「大家さん自身も補償がないので、と断られた」(中尾さん)。「一部でも補償いただければ本当に助かる」(同)。
香港だけでなく、コロナ第2波のリスクはどの国にもある。3月上旬までは感染者数200人台に抑え込んでいたシンガポールも、3月中旬以降は抑え込みに失敗。現在は感染者が2500人を突破し、4月3日には外出制限の方針発表に踏み切った。日本でも4月7日に、東京・神奈川・埼玉・千葉・大阪・兵庫・福岡に対して緊急事態宣言が発令された。しかし、対象から除外された北海道でも4月9日に新たに18人の感染が確認されるなど、第2波が警戒されている。
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