コロナ危機対応でEUの亀裂が一段と深まるワケ イタリアの債務に懸念もオランダは強硬姿勢
新型コロナウイルスの感染拡大に見舞われているEU(欧州連合)では、加盟国間の亀裂が表面化している。爆発的な感染拡大からすでに1カ月以上が経過するが、いまだにEUとして一体的なコロナ危機対応をまとめ切れずにいる。7日に行われたユーロ圏財務相会合(ユーログループ)は、16時間に及んだ徹夜の協議にもかかわらず、結論が出ないまま終わった。
9日に再開された協議でどうにか合意文書をまとめたが、コロナ対応の財政資金を調達するため、欧州諸国が共同で債券を発行するコロナ債などでは、意見の相違を抱えたまま再び結論が先送りされた。2会合連続での合意見送りとなれば、EUの結束が問われかねない状況にあった。
EU理事会のミシェル常任議長(EU大統領)は「総額5400億ユーロの大型対策で合意した」と成果を強調したが、2日間の集中協議を経ても南北欧州間の溝はほとんど埋まらなかったのが実情だ。
相変わらず財政規律に厳しい北の国々
まず、これまでに合意した内容を整理する。
第1に、コロナ危機対応で財政資金が必要となった国に対して、EUの財政救済基金である欧州安定メカニズム(ESM)から融資枠(クレジットライン)を設定することが決まった。財政資金が不足する国はGDP(国内総生産)比で2%までの借り入れが可能で、融資枠の総額は2400億ユーロ。
欧州債務危機時に創設されたESMの融資を受けるには、通常、厳しい財政再建や構造改革を要求される。債務危機時のギリシャを思い起こしていただきたい。財政規律を重視するオランダは、コロナ危機対応であっても、厳しい融資条件(コンディショナリティ)を課すことを要求した。他方、財政資金不足の恐れがあるイタリアは、コロナ危機対応の特殊性に鑑み、無条件あるいは限定的な融資条件を求めた。
合意文書では、直接または間接的にコロナ関連の医療、治療、予防に充てることが融資枠を利用する唯一の条件であると記している。オランダが譲歩したようにも読めるが、他のESMプログラムと同様に、支援を受ける国は債務が持続可能かどうかの検証や経済財政サーベイランス(監視)の対象となる。実際、オランダのフクストラ財務相は会合後も、ESMの財政支援にはコンディショナリティが設定されると主張している。
第2に、コロナ危機対応で各国が導入する雇用対策資金に充てるため、総額1000億ユーロの融資制度を創設する。
都市封鎖による国民生活への打撃を軽減するため、時短活用で解雇を抑制した企業に対する補助金や失業保険制度の拡充などの失業対策を対象に、優遇した融資条件で加盟国政府に資金を提供する。その財源については、EU予算を極力活用するとともに、加盟国政府が保証を提供することとしている。だが、オランダやフィンランドなどは、政府保証の提供に難色を示しているとされる。
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