コロナ危機対応でEUの亀裂が一段と深まるワケ イタリアの債務に懸念もオランダは強硬姿勢

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財務相会合で合意した内容は23日のEU首脳会議で承認を目指す。イタリアのコンテ首相は合意直後のテレビ・インタビューで、復興基金の財源としてコロナ債の発行で合意しないかぎり、首脳合意に署名しない可能性を示唆している。

今回合意した使途のみを限定されたESMの融資枠も、イタリア国内では財政監視の対象になるとの警戒が根強い。EUに懐疑的な右派ポピュリスト政党の同盟は、合意に署名したグアルティエリ経済財務相の辞任を要求しているほか、連立政権の一角を占める五つ星運動からも不満の声が浮上している。

こうした政治情勢に鑑みれば、イタリアがESMの融資枠を実際に利用する可能性は低い。利用される可能性が低い安全網は、安全網としての役割を果たさない。

「連帯」は見られず、EUの危機

当面はECB(欧州中央銀行)がイタリア国債の大量購入を続け、債務危機の再燃を無理やり封じ込めることが予想される。だが、コロナ危機対応での「パンデミック緊急資産買い入れプログラム」(PEPP)は、今年いっぱいで終了する。危機終息後も膨れ上がった政府の借金は消えず、来年にはイタリアの債務返済能力の悪化が市場の標的となるだろう。

イタリア国民の間では、コロナ危機対応でEUが自国の助けになっていないとの不満が高まっている。加盟国間の連帯(ソリダリティ)をうたうEUの存在意義が今こそ問われている。

田中 理 第一生命経済研究所 首席エコノミスト

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たなか おさむ / Osamu Tanaka

慶応義塾大学卒。青山学院大学修士(経済学)、米バージニア大学修士(経済学・統計学)。日本総合研究所、日本経済研究センター、モルガン・スタンレー・ディーン・ウィッター証券(現モルガン・スタンレーMUFG証券)にて日、米、欧の経済分析を担当。2009年11月から第一生命経済研究所にて主に欧州経済を担当。

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