「女子高生の冗談」が招いた信用金庫破綻の危険 人は当事者よりも「第三者の情報」を信用する
しかし、その会話を聞いた人が「豊川信用金庫は(経営が)危ない」と、話の内容を勘違いして家族に伝えたことから発生し、それが瞬く間に噂となって町中に広がりました。このため、預金者が信用金庫に殺到し、最終的に短期間で20億円もの預貯金が引き出されるパニックへと広がっていきました。うそならぬ「ジョークから出たまこと」ですね!
ちょっとした話が、どんどん尾ひれをつけながら広がっていき、豊川信金側が「倒産などの危険性はない」と否定しても、なかなか信じてもらえませんでした。このように、検証手段がない話を、自分と利害関係のないところでされると、疑う理由がないので、簡単に信じてしまうことがあります。
一度広まった情報はなかなか訂正できない
さらに、一度信じられてしまうと、当事者がそれを否定しても効果がありません。「悪い話は広がってほしくないだろうから、それは否定するだろう」と思われてしまうので、なかなか信じてもらえないのです。
また、このような大規模な事件になると「交差ネットワークによる二度聞き効果」という現象も、当事者側に不利に働きます。
この心理効果は、別々の人から同じ噂を聞くと信じやすくなるというものです。SNSなどでフェイクニュースが広まりやすいのは、この心理効果の影響が大きいと言えるでしょう。
このような人間の性質を理解し、武器にしているのが広告代理店やPR会社です。インフルエンサーによるPRなどは、その最たるものと言えます。どれだけ本当に美しい絶景でも、地元の自治体が宣伝するより、インフルエンサーたちがSNSに映える写真をアップしてくれるほうが、受け手の心に響きやすいのです。
これを逆手に取るのがいわゆるステルス・マーケティングです。アマゾンなどのネットショップで、商品を購入したユーザーに「いいレビューを書いてくれたら、代金を返金する」と連絡してくる業者の存在なども知られています。
当事者が言いたいことを、利害関係のなさそうな第三者に言わせることができれば、ウィンザー効果と似たような効果を利用できるわけです。そのため、アメリカでは、ステルス・マーケティングを法律で禁止しています。
一方、日本でも、広告記事やインフルエンサーによる露出に「PR」などと表記する例が増えてはいますが、法律で禁じられているわけではありません。いつかは日本でも禁止になるかもしれませんが、法の整備を待っているあいだにも、ステルス・マーケティングは増殖し、巧妙化していくでしょう。
そのため、サクラを使ったステルス・マーケティングを、自力で見抜けるリテラシーを身につけることが、日本の消費者としては大切になってくるのです。
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