堀潤×宇野常寛「何が私たちを分断しているか」 それは世界中で起き、間違って使われている
だから1つには核やミサイル、拉致問題など日本にとって最も深い分断が北朝鮮との間にはありますけど、韓国にしても朝鮮半島とは物理的地理的にも、日本は共存共栄していかなければならない。でも政治が冷え込んでいる。その中で、国際NGOのJVC・日本国際ボランティアセンターなどが中心となって、約20年間、朝鮮との交流を続けている。
宇野:2019年に起きた日韓問題というのは長期的に考えたときに、少なくとも日本と韓国どっちも得しないんですよね。それを、日韓それぞれの時の政権が、自分たちの支持勢力に対して、パフォーマンスとして強硬的な姿勢をとったことは、間違いない事実としてある。
そして、そのような政権のナショナリスティックな振る舞いを支持する人々には、韓国はナショナリズムを先導することによって強固な国内統合を図っているではないか、日本が同じことをやって何が悪いんだ?と居直る言説がすごく支配的だった。
こうした言説に対して、それは間違っているとか、それは国益にそぐわないと主張することはすごく簡単なことだけれど、そういった言葉で説得するのは難しいと思っています。彼らが一番守りたいものは、日本という大きい仕事に同一化することの気持ちよさだったり、勇ましい言説に触れることの高揚感、「露悪な本音主義を受け入れて、勇ましいこととか、マッチョなことを言っている自分」なんだと思うんです。
言葉で説得する難しさ
そのように、気持ちよさとか安心感とか、そういった次元のことを求めている人たちに、それは正しくないとか、それは合理的ではないとか、そういった言葉で説得するのは難しい。気持ちよさには、気持ちよさで対抗するしかないんだと。まさに堀さんが平壌で見てきたように、やっぱり戦争はよくないよみたいなことを、北朝鮮の学生さんがポロッともらすシーンや、いつ使えるかわからない日本語を彼らが愚直に学び続けていることがわかるシーンで訴えることが必要だと思う。
たぶんですけど、映画に登場するあの北朝鮮の大学生の彼は、スパイの為に日本語を使おうなんて考えてなくて、日本の文化とかに対して興味を持っていて、いつか日本に関わりたいと思ってくれているのは、フィルムから透けて見えるんです。
あれを見ると、いつかこの子たちとポジティブに交流できる日が、もっとおおっぴらに来るといいなということを、みんなが自然と思えるじゃないですか。だから、ネガティブな欲望にポジティブな欲望で対抗するということも、すごく必要なことだなと思います。
堀:学生同士の再会のシーンがありますが、あれはたまたま2年連続で取材したから見られたもので、関わり続けることの大切さを見ました。
宇野:人間にとってその場で嘘をつくことはとても低コストだけど、長期的なうそをつき続けることってすごく難しいじゃないですか。ずっと、同じものに関わり続けるからこそ見えてくるものって、今みんなが忘れかけているからこそ貴重だと思うんです。
【2020年4月16日13時30分追記】関係者のプライバシーに配慮して、記事本文を初出時から一部修正しました。
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