堀潤×宇野常寛「何が私たちを分断しているか」

それは世界中で起き、間違って使われている

宇野:そういった割り切れないものをちゃんと持ち帰ってくるのがジャーナリズムの役割です。でも、今のジャーナリズムというのは、それはマスメディアもソーシャルメディアも含めて、割り切るためのものになってしまっている。その割り切ってしまいたい僕たちの心が、分断を生んでいるのではないかと思います。

:本当にそうだと思います。ずっと、分断の原因はなんだろうと思いながら取材をしていました。何かに石を投げるのは簡単なんです。

例えば僕は、平壌に行っていちいち驚くわけですよ。「あ、ハイヒールを履いてる」とか「スマホ持ってる」とか。でもそれは誰に驚かされているのかと考えると、「北朝鮮」という国に対して持っている既存のイメージでしかないんです。

こういう固定観念の世界はもっともっと身の回りにあって、「こうあるべきだ」「こうに違いない」「こうに決まっているだろう」みたいな世界の中に僕たちはいる。そこに無自覚でいたら自分はやはり誰かを脅威として捉えて、その誰かを排除する側として居続けるんだろうなということをすごく感じながら取材していたんですよね。

基地反対運動をめぐる対話で感じたこと

宇野:何カ月か前に沖縄反基地運動に関わっている人と話をする機会があったのですが、あんまり対話にならなかったんです。

僕は基地をどうにかして縮小、できれば撤廃したいという自分自身の立場から、こういう形の世論の喚起が必要なんじゃないか、もっと持続的な運動にするためにはこういうふうに取り組んでいくべきではないかという提案を一生懸命したつもりなんですけど、その対話の相手には何を言っても響かない。

その人の中には、僕からしてみれば陰謀論に聞こえるような隠された事実というものが存在していて、その事実が公表され広まりさえすれば、世界中の人々は自分たちが正しいと思ってくれて、それが民意となり米軍の基地が撤廃できるということをずっと判子を押すみたいに言い続けるんです。

それは彼なりに沖縄の人たちに寄り添おうと思った結果だから一概に否定したくないんだけど、そうなってしまうと単純化されたストーリーに固執してしまって、本来であれば一個一個ていねいに解きほぐしていかなければならない複雑に絡み合った知恵の輪を、ペンチを抜いて力づくで引きちぎるような答えしかなくなってしまう。

次ページ力業で引きちぎると、もう元の形には戻らない
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