「都心・駅近・タワマン」の住居価値が低下する訳 在宅勤務で「住まい探し」にも多様性が広がる

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そう考えれば、未だに根強い「会社の近くに住む」という都心居住の考え方も怪しくなってきます。確かに都心は「交通利便性」が高い。とは言え、今現在多くの人が考える「交通利便性」とは、あくまで自分たちが勤める会社との行き来のために便利かどうか、つまり「通勤利便性」という意味合いが強かったのではないでしょうか。

たとえばそういう意味での「通勤利便性」を重視し、湾岸の工場跡地などにやや強引に建設されたタワーマンションなどは、人々が暮らすための環境が整っていない立地にあるのも事実です。

現代の若い人がかつての同世代に比べて車を所有していない、とよく言われます。車は必要なときにシェアカーなどを使う。車を買っても使うのは週末だけで、駐車場代などのコストを払う、あるいは家のまえに「展示」をしているくらいなら買わないほうが良い。自転車すらシェアで問題ない。洋服だって誰かが一度着たもののリユース(たとえばメルカリなどを利用して)で十分、という考え方がごく当たり前になりました。

つまり以前のように、とにかく消費することを喜ぶ、というライフスタイルはとっくに廃れてしまった、ということです。

通勤利便性だけが家選びの基準ではない

こうした大きな変化がライフスタイルに生じる中、時に辛さを伴うこともある「通勤」だけ、旧来の習慣として残っていくとは到底思えません。

そして「通勤」がなくなった瞬間、同時に「通勤利便性」という概念も消え、住まい選びの価値基準は大きく転換していくことになり人々は「街」との関係性をもっと真剣に考え始めるようになります。なにせ「街」を出ないまま、1日の大半を過ごすことになるわけですから。

否が応でも私たちはこれから先「家の良し悪し」「通勤利便性」にこだわっていた住まい選びを根本から覆すことになるのです。

一昔前は、お父さんは毎日遅くにしか帰ってこない、そのため専業主婦のお母さんと子供がハッピーに過ごせる「街」が求められました。そして今の現役世代は会社への通勤を重視するという「通勤利便性」、とりわけターミナル駅周辺を選好する傾向があります。

しかしこれは「ベッドタウン」として住む街を選んでいるだけで、実は昭和から平成初期までの「住まい選び」となんら変わりがありません。

これから先、街を住みこなすために最も重要なこととは、実は「自分のライフスタイルを確立すること」にあります。

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