「都心・駅近・タワマン」の住居価値が低下する訳 在宅勤務で「住まい探し」にも多様性が広がる
サラリーマンといえば毎朝毎夕、通勤電車に揺られて都心にある会社に通うというのがお決まりで、郊外からの長時間通勤のストレスからはなかなか解放されませんでした。しかしこうした生活スタイルは1990年代半ば以降、ようやく変わり始めます。
まず経済、産業構造の変化で都心部の工場がアジアに移転し、土地の容積率も緩和された結果「タワマン」と呼ばれる超高層マンションの建築が可能となりました。
さらに夫婦共働きが当たり前になった結果、世帯年収が上がり、低金利の追い風を受けて世帯における住宅購買力が飛躍的にアップしていきます。こうして団塊ジュニア以降の世代は幸いなことに、親たちには叶わなかった都心居住が可能となりました。
しかし、これもまだすべてが「働く」ことを優先した選択でした。会社に通勤する以上、居住地を会社の近くに設定する。それはある意味で合理的な選択がもたらした結果です。つまり私たちは意図するとしないとにかかわらず「会社ファースト」の人生選択をどこかで行ってきた、ということです。
オフィス環境やAI技術で働き方が変わる
その根底には、社会やライフスタイルが変化しようと、なかなか変わることが無かった朝9時に出勤して午後5時になれば帰宅する、という昭和時代の「働き方」がベースにありました。
しかし感染拡大を見せているコロナウイルスの影響もあり、人々の働き方は、政府が提唱する「働き方改革」を待つまでもなく、大きく変わり始めています。
特にこれからの社会では通信機器やオフィス環境、AI技術の進化などにより、会社の業務そのものまで大きく変わることも容易に予測できます。それに伴い、会社の構造が必然的に変わることになります。
社員1人にデスク1つをきっちり用意しないフリーアドレス制を導入する会社が増えていることもよく知られていますが、今後はさらにその先、社員間はオンライン上のみで繋がり、各社員が好きなとき、好きなスタイルで仕事をするビジネス形態へと近付いていくのではないでしょうか。
そしてそのとき、世の中から「通勤」という言葉はなくなるかもしれません。そもそも「勤める」ために会社へ「通う」理由がないのですから。つまり長く続いた「会社ファースト」時代が、いよいよ終わりを告げる時がきたのです。
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