決済システムが財テク商品へと進化
ネット通販に欠かせないのが決済システム。中国で最初に普及したオンライン決済方法は、銀行預金から直接引き落とせる「デビットカード」でした。次はクレジットカードの時代かと思いきや、ここで一気に普及したのがインターネット上のショッピングサイトが提供する決済サービスです。アリババの「支付宝」がそれで、以前は金銭授受でだまされるのが心配でネット通販を敬遠していた中国人も、支付宝のおかげで安全にネットでの買い物を楽しめるようになりました。
このサービスがさらに進化したのは、2013年6月。アリババが新たに導入した「余額宝」は、銀行の定期預金利率をはるかに上回る年利5~6%で回るファンドで、「支付宝」から当座使わない分のおカネをこちらに回して財テクすることができます。余額宝はすでにユーザー8100万人を獲得、運用資産総額は5000億元(約8兆2500億円)に達したとFinancial Timesで報じられています。
一方、ライバルのテンセント(騰訊)は、ユーザー6億人のソーシャルアプリ「微信」に、昨年8月に独自の決済システム「財付通」を導入、ネット通販への取り組みを本格化させました。それに対して、アリババは微信から陶宝サイトへのアクセスを断絶して反撃。すると、2014年1月にテンセントは微信上で蓄財できる「理財通」ファンドサービスを開始、年利6.4%以上と、アリババの「余額宝」を上回る金利を実現して、全面対決モードに入っています。こうしたオンライン金融商品の隆盛は、現在、法律で固定されている国営銀行の金利を、自由化へ向かわせる圧力になるとみられています。
生活利便と娯楽の総合プラットフォームへ
この2社が、決済やファンドサービスを普及させるためのインセンティブとして提供しているのが、タクシー配車アプリです。アリババの「快的打車」、テンセントの「Didi打車」共に、アプリを使ってタクシーを呼ぶと、タクシー料金が10元安くなる(北京の初乗り運賃は13元)という無茶苦茶なプロモーションを行って、消費者を自社の決済サービスへと誘導しています。
アリババとテンセントは、オンラインファンド商品の提供にとどまらず、銀行業への進出という野望を持っています。3月12日付Wall Street Journalは、アリババとテンセントが、北京市が設立予定の民営銀行5行の候補に入ったと報じています。両社がさらにその先に見据えているのは、生活情報、娯楽コンテンツ、ショッピング、ネットバンキングなど、生活全般の利便性を一手に引き受ける総合ポータルサイトとしての覇権争いです。
事実、テンセントは中国第2位のeコマース企業「JD.com」のエクイティ15%を2.15億米ドルで購入し、また、2月には中国の飲食店口コミ情報サイト「大衆点評網」の株を20%取得しています。アリババも、コンテンツ強化のために、映画・テレビ番組製作会社「文化中国伝播集団(ChinaVision Media Group)」の株式60%を約8億米ドルで買うことに合意したとの報道がありました。
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