新型コロナでデフレが復活するこれだけの理由 需要不足の現状でインフレ予想に根拠はない

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現在、世界の先進各国は大規模な財政出動を行っており、その帰結がインフレになると指摘する声もある。それは財政の悪化につれて日本国債への需要が減少して国債価格が急落する(金利は急騰)という事態を心配するものだ。ばらまき政策が継続的に続くのであれば、問題は生じうるだろう。日本において財政規律の問題はつねに指摘されてきた。

ただ、安倍政権は実は世間の印象ほど財政拡張を行っていない。10%への消費税率引き上げもなんとか実現し、今回の対策でも現金給付などの対象を一部の人々に限定しようとしている。大盤振る舞いが一時的なものにとどまるのであれば、「今回の危機では世界中が財政出動を行っており、日本の財政悪化にことさら注目が集まるということはない」(ニッセイ基礎研究所・斎藤氏)であろう。

潜在成長率が一段低下するのではないか

こうしてみるとコロナショックが、物価全般が大きく上昇するインフレを招くことは考えにくい。懸念されるのは、需要が一段縮小して、潜在成長率(中長期的な成長の実力)が再び低下することだ。

リーマンショック後には日本のみならず欧米でも潜在成長率が下がって、低インフレ傾向が強まった。潜在成長率とインフレ率は連動しているようである。

だが、これを防ぐための処方箋は、新たなバブルを生む金融政策や財政拡張ではない。ポスト・コロナ時代に対応した次世代通信規格5GなどのIT関連への投資や、持続可能性に配慮した医療・環境への投資など、民間企業による新たな成長分野への投資を促進して、産業構造の見直しをはかることだ。

大崎 明子 東洋経済 編集委員

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おおさき あきこ / Akiko Osaki

早稲田大学政治経済学部卒。1985年東洋経済新報社入社。機械、精密機器業界などを担当後、関西支社でバブルのピークと崩壊に遇い不動産市場を取材。その後、『週刊東洋経済』編集部、『オール投資』編集部、証券・保険・銀行業界の担当を経て『金融ビジネス』編集長。一橋大学大学院国際企業戦略研究科(経営法務)修士。現在は、金融市場全般と地方銀行をウォッチする一方、マクロ経済を担当。

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