「共同親権」は子ども視点で見ると大問題だ 「許可を得る相手」が増えるだけかもしれない
――親から虐待されてきた子どもには、離婚をきっかけに自分を虐待した親から離れられたら、その親に会いたくない子どももいます。そこで、「親に会いたくない」と望む子どもの権利を、離婚後に共同親権を認める場合、どのように守るのでしょうか?
宗像充(以下、宗像):子どもの安全は親同士の関係とは別個に守られるべきもの。それは婚姻しているいないを問わず。虐待の加害者が離婚すれば被害者から離れてくれるわけでもありません。単独親権では、親権者は子どもを確保した側に与えられます。DVや虐待の加害者も単独親権者になっています。
虐待の加害者の割合で一番高いのは実母で、親権者の8割が女性。現在の制度で子どもの安全が守られていないとするなら、親権制度の問題ではなく、虐待の抑止策が有効ではないから。それは婚姻内外問わない共同親権でも手を打てること。
親権の有無と虐待の発生に因果関係はありませんが、あるとしたら単独親権で同居親が孤立し、それが子どもに虐待行為をするきっかけになりうる場合。虐待の発生では、実父母の監督がある場合、割合が一番低い。婚姻外でも共同親権が原則化し、双方の親との関係が維持されることで、ひとり親家庭の虐待の抑止もなされる。
離婚後の共同親権、子どもが苦しまないためには?
――離婚後まで共同親権になる場合、子どもは離婚前と同様に両親の争いを見る機会が温存されます。今日では、子どもが両親の争いに立ち会えば、それ自体が心理的虐待とみなされ、一時保護の対象となります。離婚後まで心理的虐待を子どもに与えるリスクがないようにするために、どのような法的配慮が必要だと考えていますか?
宗像:子どもの家は2つになります。双方の家を行き交うので、両親の争いに立ち会う場面は婚姻中より減ります。そのため、共同親権に移行した国では、養育時間の配分や話し合いの方法を定めた詳細な養育計画を立てることが別居・離婚時に義務化されています。
――現行法では、子どもは親権者の良心にのみ期待するしかなく、子どもは自分の進路すら親と交渉して勝ち取らなければならないものになっています。
交渉相手が離婚後も2人のままだと、子どもは交渉に2倍の労力がかかり続け、両親の意見が異なれば、その争いに巻き込まれます。子どもが苦しまないようにするために、離婚後の共同親権を成立させる際、どんな付帯条項をつけるつもりですか?
宗像:それは婚姻中の共同親権においても同じことですので、もしこういった付帯条項の必要性があるというなら、戦前のように婚姻中も単独親権にするのが一番いい。
子どもの福祉の観点と男女平等の観点から、戦前の単独親権制度は戦後は婚姻中においてのみ共同親権になっています。共同親権が子どものためにいいからです。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら