「共同親権」は子ども視点で見ると大問題だ 「許可を得る相手」が増えるだけかもしれない

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離婚後の共同親権の立法化を訴える声が盛んになりつつあるが、子どもの言い分は考慮されているのだろうか?(写真:takasuu/iStock)

現在の民法は、離婚後は父母のどちらかを親権者とする「単独親権」を採用している。しかし、親権を失った親が養育に関わりにくくなり、子どもとの交流を絶たれることなどを根拠に、離婚後の共同親権の立法化を訴える声がここ数年、政界でも国民の間でも盛んになりつつある。

2014年3月、超党派の「親子断絶防止議員連盟」が設立され、2018年2月に「共同養育支援議員連盟」に改称。こうした動きを受け、法務省は2019年9月、共同親権導入の是非などを議論する研究会を立ち上げた。

一方で、離婚後の単独親権は、法の下の平等を定めた憲法14条に違反するとして、40代男性が子どもの共同親権を求めた訴訟の上告審で、最高裁は2019年2月28日、男性の上告を棄却する決定を出した。

また、今年2月、ひとり親世帯らの支援を行う「シングルマザーサポート団体全国協議会」が共同親権の法制化に慎重な議論を求める1万708人分の署名と要望書を森雅子・法相に提出するなど、反対の声も上がっている。

増え続ける虐待、反映されない子どもの声

もっとも、こうした親権をめぐる単独・共同の議論では、離婚によって生育環境の変化に対応しなければならない当事者である子どもの言い分は、有権者ではないために改正案に反映されない。

それどころか、この議論は、マスコミ報道でも、民間のイベントでも、子ども視点で語られることが乏しい。ほとんどは親の立場からの議論であり、まるで「子どもは黙っておけ」と言われているような状況だ。

このまま議論を進めていっていいのだろうか?

親権とは、未成年者の子どもを監護(子どもと一緒に生活をして日常の世話や教育を行うこと)・養育し、その財産を管理し、その子どもの代理人として法律行為を行う義務であり、権利である。

これを子どもの立場から読み直すなら、どんなに恐ろしい親権者であっても監護・養育され、自分が少しずつ貯めた貯金や趣味のグッズなどの財産を管理され、自分の代理人として法律行為を親権者に勝手に進められてしまうリスクすらある。

実際、全国の児童相談所に寄せられる虐待相談は1度も減ることなく30年間も増え続け、2018年度の対応件数は15万9850件(厚労省発表)に達し、過去最多を更新した。子どもを虐待する親権者の問題は、日々深刻化している。

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