水野学×山口周「AIには"世界観"は作れない」 デザイナーの仕事でもこう「二極化」する

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将来的にAIでもデザインや音楽ができるようになるのか、山口周氏(写真)と水野学氏に語り合ってもらった(写真提供:朝日新聞出版) 
「くまモン」「相鉄」などを手がける、日本を代表するクリエイティブ・ディレクターの水野学氏。『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』など多くベストセラーを執筆した著述家の山口周氏。
いま最も注目される二人が「今の社会で何が価値になるのか?」をテーマに対談した共著『世界観をつくる「感性×知性」の仕事術』を上梓した。同書でビジネスとクリエイティブを繋げた発想法や働き方について語り合っている。前回記事に続き、本の一部を抜粋・再構成して紹介する。

ココ・シャネルの前と後

水野学(以下、水野):僕はよく、「デザインには前と後ろがある」と言っているんですよ。「後ろ」は、絵を描いたり、形をつくったり、いわゆるデザイナーの仕事だと思われている部分。「前」っていうのは、例えば料理でいうと、どんな料理をつくるかという構想段階のことです。この構想のうまい・下手こそが肝なんですよね。

山口周(以下、山口):デザインの前と後ということで言えば、シャネルスーツやシャネル・バッグは、ココ・シャネルのデザインの「後」です。

シャネルは1940年代に上流階級の女性向けの服をつくり始めたけれど、当時のオートクチュールはウエストを締めて胸を強調するという、着心地が悪く、見た目は綺麗で性的なドレス。高額だから、顧客はパトロンやブルジョアの旦那さんに買ってもらうわけです。窮屈なコルセットがついていたのは、ある意味、女性は愛玩物という象徴にも思えます。

ガブリエル・シャネルは孤児院で育って、酒場で歌ったり、一時は愛人なんかもしていたけれど、「男性に頼らない生き方をしたい」という強烈なプライドと野心を持っていた。女性がもっと自由になって、自分の服は自分で選ぶべきだという価値観こそ、水野さんがいうところの、シャネルのデザインの「前」なんです。

水野:シャネルは女性をコルセットから解放し、男性のものだったジャージやツイードを初めて婦人服で使い、女性の服に初めて黒を用いたことでも知られていますね。両手が自由になるショルダーバッグもシャネルの発明だそうですね。

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