「大学時代からの仲良くしている5人組がいるんですね。2人は20代で結婚をして、もう1人は30をすぎた頃に結婚をした。私ともう1人が独身だったんですけど、その1人が先日結婚したんです。独身なのは私だけ。早くに結婚した3人にはもう子どももいるし。私もみんなと同じように結婚したほうがいいのかなと思って」
ところが冒頭で記したように、入会2カ月で100人以上から申し込まれても、これまでお見合いしたのは、たったの5人だったのである。その理由も、「誰を選んでいいか、その基準がわからない」というものだった。
5人目の男性とはうまくいっていたはずが…
ところが、5人目に見合いをした3つ上の隆次には、交際希望を出し、順調にデートを重ねていた。
「お付き合いの進捗は、どうですか?」と、 週明けの月曜日にLINEを入れると、「もう4回お会いしました。コロナの影響で水族館やテーマパークは閉館しているところが多いので、今度の日曜日は、桜を見に車で遠出することになっています」というLINEが返ってきた。
これは一安心と思っていたのだが、翌日の火曜日に隆次の相談室の仲人から、“交際終了”の連絡が来た。私は驚いて相談室に電話をかけると、仲人は言った。
「今度の土曜日に車でドライブに出かける約束をすでにしているようなので、今交際終了を出すのはどうかとも思ったんですけど。米川が、『約束しているからといってドライブに行って、それから交際終了を出したら、そのほうがよっぽど失礼じゃないか』と言うので」
どうしてそんなに急な心変わりをしたのか。それは、先週お見合いした相手を隆次が気に入ってしまったからだという。その女性は、隆次と同い歳の39歳なのだが、交際にとても積極的だった。
「LINEも女性側から毎日くるし、2週間前に見合いしてから、すでに4回会っていると言うんです。今、コロナの影響で会社も残業がないでしょう? ウィークデーも、『この日、食事しませんか?』と女性から積極的に誘ってくる。あと、LINEも1日、4~5往復しているみたいなんです。
米川が言うには、『友美さんとの連絡はいつも自分からで、彼女からLINEが来たことは一度もない。返信もその日ではなく、決まって翌日か翌々日で』と。
ところが、同い年の彼女は、積極的だし話をしていても楽しい。すっかり気に入ってしまったみたいなんですよ」
これはもう仕方がない。婚活市場において、ちゃんと自分で選ばれるようにアピールした女性に、ただ待っているだけの女性は負けてしまうのだ。
その夜、米川の相談室から「交際終了」が来たことを友美に告げた。彼女にしてみたら、土曜日のドライブを楽しみにしていたのだから、青天の霹靂(へきれき)だろう。しばし沈黙の後、かすれた弱々しい声で聞いてきた。
「どうして急に交際終了なんですか?」
そこで、仲人から聞いたことを話した。すると、またしばし沈黙の間があって、今度は涙声で言った。
「男の人とお付き合いするのは初めてだったので、私からLINEを送ったり、電話をしたりすることは、恥ずかしくてできなかった。それに、来たLINEにすぐ返事をするのは、ガツガツしていると思われるんじゃないかって。頂いたメールには、必ず返信していたので、私はうまくやり取りができているものだと思っていました」
私は、もう一度、婚活市場で婚活をするというのは、どういうことなのかという話をした。「ライバルがたくさんいることを忘れてはいけないんですよ」と言って、その日は電話を切った。
すると、翌日、こんな LINEが来た。
「人を条件で選んだりしていいものか。でも、そうしないとお見合いができない。そんなことをしている自分がはしたないと思ってしまいます。ただそれをしていかないと結婚ができないんですよね。それなら、そこまでして結婚をしなくてもいいかなと思い始めています」
“結婚してこそ一人前”という考え方は、もはや昔のこと。今は、結婚をするかしないかは、個人で選択する時代になっている。
人を好きになる熱量の少ない人にとっては、結婚することが難しい時代なのかもしれない。
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