「宝塚が大好きでした。今もそうで、ごひいきのジェンヌさんがいるんです。その方を全力で見送ると、次のごひいきさんを見つける。ファンクラブにも入っています。ジェンヌさんとのお茶会に参加することもあります」
私は一度も公演を見たことがないのでその魅力やすばらしさは想像するしかないが、一度観劇をすると、夢中になり、どっぷりと宝塚にのめり込んでいく人は、男性にも女性にも多いと聞く。
すでに退会してしまった女性会員(39歳)も、宝塚のファンで、「全国で公演を見ている」と言っていた。そして、宝塚ファンに共通するのは、自分の愛情やお金や時間を、舞台で華やかに歌い踊るジェンヌに注ぎ、そこにいいようのない満足感や高揚感を得ていることだ。これは何も宝塚に限ったことではなく、アイドルや舞台俳優にハマりのめり込んでいる人たちもしかりだ。
ただ、手の届かないアーティストたちに愛情を注ぎながらも、生身の異性とも付き合う人たちもいる。一方でリアルな恋愛をせずに歳を重ねてしまう人たちもいる。その個人差は、なぜ生まれてしまうのだろうか。
リアルな恋愛をするかは熱量の問題?
入会面談のときに、友美にこんな質問をした。
「学生時代は、周りに男性がいなかったのかもしれないけれど、就職してからは職場に男性がいたでしょう? 周りにいる男性を好きになったり、お付き合いしてみたいなと思ったりしたことはないの?」
少し考え込み、友美は言った。
「いいなと思った人はいたけれど、そこから先をどう進めていいのかわからなかったし、おそらくですが、恋愛に結び付くほど好きではなかった気がするんです」
私は、この仕事を始めて、まったくリアルな恋愛をせずに歳を重ねている人が相当数いることに驚かされた。そして人によって、異性を好きになる熱量が違うことにも気づかされた。
出会った瞬間に一目ぼれをして、好きになったら猪突猛進するタイプの人がいる。その恋が実らず玉砕して傷ついても、その傷が癒えた頃にはまた別の人を好きになっている。
また、人を好きになる感情よりも性の対象として異性を見て、体の関係を持つまでは全力を注ぎ、目的を達成すると気持ちがストンと冷めてしまう、いわゆるヤリモクもいる。
友美のように“いいな”と思っても、“それが恋愛に結び付く感情なのかどうかわからない”という、恋愛に対しての思いが薄い人もいる。
私は、さらに友美に聞いた。
「これまで恋愛してこなかったのに、なぜ今ここで結婚相談所に入ろうと思ったんですか?」
すると、友美が言った。
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