コロナ倒産の連鎖防止「納税猶予」が有力な理由 今の経済活動にいちばん必要なのはマネーだ

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利益が多くても手元資金が少ないと企業は倒れてしまいます(写真:FUTO/PIXTA)
昨今の経済現象を鮮やかに切り、矛盾を指摘し、人々が信じて疑わない「通説」を粉砕する――。野口悠紀雄氏による連載第11回。

新型コロナウイルスの感染拡大が世界に広がり、社会・経済に大きなダメージを与える中で、経済活動に急激な変化が起きています。

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それは、「利益」を求める競争から、「マネー」を求める競争への急転換です。緊急融資などが必要なのはもちろんですが、政府が行いうる最強力の流動性供給策は、無条件の納税猶予です。これは、短期国債の日銀引き受けで可能になります。

「マネー」というのは、誰もが受け入れる支払い手段です。日本でいえば、日銀券と銀行預金です。これは、「マネーストック」と呼ばれています(注)。3月末で約1000兆円。大部分が銀行預金です。

(注)マネーストックには、定義によっていくつかの種類のものがあります。このほかに政府貨幣がありますが、額が少ないので無視します。

驚くべきは、金(きん)の価格が、2月中旬から急激に下落したことです。金は、戦争など有事の際に価値を保存する手段として最も強いと言われてきたのですが、その価格が下がったのです(なお、最近時点で若干、反発)。

それは、金は支払手段として誰もが受け取ってくれるものではないからです。

同じことがビットコインなどの仮想通貨についても言えます。これも、誰もが受け取ってくれるものではありません。このため、3月から価格が顕著に下落しています。

株価の下落も同じ現象と解釈できます。つまり、株式は支払い手段として誰もが受け取ってくれるものではないため、価値保存手段として、株式ではなくマネーが選好されているのだと解釈することができます。

売り上げ急減で連鎖倒産の危険

人々は、いまマネーを求めて資産構成を大きく再構成しようとしているのです。そして、その行動には必然性があります。

したがってこの行動を止めようと努力しても、意味はありません。

つまり、日銀がETF(上場投資信託)購入などを行って買い支えようとしても、無理筋です。いま日銀に求められているのは、人々の資産を株式に留め置こうとすることではなく、経済の流動性が枯渇しないように、マネーの供給に全力を尽くすことでしょう。

なぜ、マネーを求める競争が起きているのでしょうか?

言うまでもないことですが、コロナウイルスの感染拡大防止のために行動規制が取られ、事業者の売り上げが急減しているからです。このため、手元にマネーがなくなってしまうのです。そして、資金繰りができなくなります。

すると、債務を返済できなくなり、下手をすると倒産します。そうなれば債権者の側で債権を回収できずマネー不足に陥り、そこも倒産します。このようにして倒産が連鎖していきかねないのです。

最悪の場合には、それによって、経済活動がストップしてしまいます。

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