日本では、まだ連鎖倒産が発生するまでに至っていません。しかし、これから深刻な問題になっていく危険は十分あります。
オリンピックの延期は、この状況に拍車をかけます。当てにしていた収入が得られなくなるからです。
たとえ1年後に開催されたとしても、それまでの間に収入が得られなければ、資金繰りができず、事業を継続できません。
平時において「優良企業」とは、利益が多い企業のことです。
ただ、これは帳簿上の概念です。利益が多くてもマネーを十分に保有していない企業があります。連鎖倒産が発生して経済に流動性が枯渇してくると、そうした企業は、優良企業であるにもかかわらず、倒産してしまいます。
つまり、企業に求められるものが、「利益」から「マネー」に変わるわけです。
これに応じて、経済政策の目標も変わる必要があります。
平時であれば、生産性を高め、成長率を高めること、そして分配の公平を保つことが経済政策の目標です。
これらの重要性は、いまでも変わりません。ただし、その前に、「異常事態に対応して経済を動かし続けること」が最優先の課題になったのです。
このために、必要とされる経済政策の手段も変わらなければなりません。
所得税も含め、大規模な納税猶予を
経済に流動性が枯渇する事態において政府と日本銀行が全力を挙げなければならないのは、マネーの流れをストップさせないことです。これはリーマンショックの直後にも起きたことです。
このための施策としてはさまざまなものがあります。
第1に、企業が社債やCP(コマーシャル・ペーパー)を発行し、これを日本銀行が購入する。緊急融資を行う。とくに、政府関係金融機関などが、中小企業等を対象にして行う。このようなことは、すでに決定され、実行に移されています。今後も、こうした施策を拡大していくことが必要です。
ただし、これらには、問題があります。それは、融資した資金を回収する必要があることから、審査が必要であることです。これには、事務負担と時間がかかります。
また、零細企業や個人事業者、フリーランサーなどが、簡単には利用しにくいという問題もあります。
以上のようなことを考えると、いま考えられている流動性供給策だけでは万全とは言えません。
では、何が必要でしょうか?
最も効果が大きいのは、大規模な納税猶予です。
租税債権は政府が民間に対して持っている債権です。この執行を猶予するのは、緊急融資を行うのと、同じ効果をもたらします。
経済に流動性を供給する方法としては、極めて強力であり、また迅速に行えるという意味で、優れた政策です。
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