コロナ倒産の連鎖防止「納税猶予」が有力な理由 今の経済活動にいちばん必要なのはマネーだ

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このような理由から、欧米諸国ではすでに巨額の納税猶予措置を決定しています。

アメリカ政府は、総額3000億ドル(約33兆円)の納税猶予措置を決定しました。

イギリス政府は、総額300億ポンド(約4兆円:イギリスGDPの1.5%)の付加価値税の納税の延期を決定しました。

では、日本ではどうでしょうか?

これまであった納税猶予の制度をコロナ関連にも適用することが、3月13日に国税庁の通達で明らかにされました。

しかし、これは上述のような欧米の措置に比べると、規模の点でも条件の点でも、まったく比較にならないほど限定的なものです。

猶予額はコロナによって損害を受けた額に限定されますし、申請と審査が要求されます。また、担保や延滞税を要求されることもあります。

いまのままでは、政府は巨額の流動性を税収という形で市中から吸い上げていくことになります。流動性が枯渇しているまさにそのときに、流動性をさらに枯渇することになるわけです。

この状態を一刻も早く転換させるため、無条件かつ大規模な納税猶予を決定する必要があります。現時点の報道によると、財務省・国税庁は、「消費税や法人税などの納付を最長6年猶予できるようにする方針」だとされます。しかし、これでは、不十分です。零細自営業者を救うため、所得税をも対象に含める必要があります。

年度内なら短期国債の日銀引き受けで資金繰りできる

年度内の納税猶予であれば、政府はそれを短期国債発行によって賄えます。

短期国債は、日本銀行が購入することができます。

日銀引き受けによって公債を発行することは、財政法第5条で禁止されていますが、短期国債はこの対象になりません。

しかも、租税債権は最も強い債権ですから、ほぼ確実に回収できます。

したがって延納を認めるにあたって、厳しい審査をする必要はありません。また、担保を要求する必要もないと考えられます。

外国でも、同様の方法で納税猶予の資金繰りを行います。欧米諸国がいち早く納税猶予に踏み切ったのは、このような事情があるためです。

ところで、日銀が引き受ける公債によって施策を行うのは、一見したところ、MMT(Modern Monetary Theory:現代貨幣理論)の主張と同じようなものに見えます。

MMTは、財政支出を、税ではなく、国債を中央銀行に引き受けさせることによって作りだした「マネー」によって賄うべきだと主張しています。

そうした主張を支える理由として、「マネーは実物的な資産の価値に裏付けられているからマネーとして通用するのではなく、人々がそれをマネーだと信用するためにマネーになるのだ」としています。

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