異例の廃止「妊婦加算」とは結局何だったのか 2018年4月に導入も、今年4月以降の廃止決定

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日本の医療保険制度は、保険診療制であり、患者は定められた診療報酬の定率を負担することになっています。したがって、診療報酬が上がれば、原則として患者本人の負担が増えます。

普段であれば、市販薬で済ませるところを、妊娠中だから病院で相談しようと考えるとすれば、それは、まさに、普段より充実したサービスを求めていることであり、サービスを受ければ、医療費に反映されます。実際、風邪で病院に行っただけのつもりだったのに、妊娠糖尿病の疑いがわかり大事に至らなかった、といった例もあります。

ただし、実際に誰が負担をするかは、これとは別の問題とも考えられます。例えば、乳幼児の外来診療においては、妊婦加算と同額の乳幼児加算がすでに導入されています。しかし、乳幼児加算に対しては、今回のような批判は出ていないようです。

それは、6歳未満の乳幼児に対しては、各自治体による「乳幼児医療費助成制度」で、患者の自己負担が実質的に無料、あるいはかなり低額に抑えられているからだと考えられます。加算された分だけでも、医療費助成を受けることができれば、少子化に逆行するといった指摘はなかったかもしれません。

もちろん、助成を行うにも財源が必要となります。限りある財源をどういった状態の人にどの程度使うか、乳幼児医療費助成制度を含めて議論が分かれるところです。

患者がメリットを感じる必要がある

診療報酬による誘導にも限界があることも指摘されています。診療報酬で評価することで、医療機関をあるべき医療提供体制に誘導することは、一定程度可能かもしれません。しかし、受診時の自己負担額が変わることによって、受診頻度が変わることは複数の研究で明らかになっています。

国民(患者)は、自分たちにとってのメリットを理解しなければ、負担が増えることを避けるために、受診をしない、あるいは妊娠していることを隠す、といった行動をとりかねないと思われます。

診療報酬は、多岐項目にわたる専門的かつ技術的な議論で、専門家同士で行うのはやむをえないでしょう。ただし、決定された診療報酬は、そのまま患者負担につながるものであるため、国民(患者)が、設定された診療報酬の意義を理解する必要があると思われます。

そのためには、国民(患者)は、現在の医療体制が抱える課題を知る必要があるでしょうし、新たな制度導入時には国民(患者)に丁寧な説明が必要となるでしょう。

限りある財源と医療供給体制の中、国民がより安心して医療機関にかかれるよう、現在の診療体制が抱える課題を国民に周知し、議論を深めあっていくことが重要でしょう。

村松 容子 ニッセイ基礎研究所保険研究部 准主任研究員

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むらまつ ようこ / Yoko Muramatsu

死亡・疾病発生リスクについて、統計的にその発生状況を算定すること、および、消費者調査を通じて消費者がどのようにリスクに対応するのかを研究。国が公表している疾病統計以外にレセプトデータ、健診データ、健康に関する消費者の意識調査などを使ってさまざまな視点から分析している。ニッセイ基礎研究所の著者ページはこちら

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