日本の医療保険制度は、保険診療制であり、患者は定められた診療報酬の定率を負担することになっています。したがって、診療報酬が上がれば、原則として患者本人の負担が増えます。
普段であれば、市販薬で済ませるところを、妊娠中だから病院で相談しようと考えるとすれば、それは、まさに、普段より充実したサービスを求めていることであり、サービスを受ければ、医療費に反映されます。実際、風邪で病院に行っただけのつもりだったのに、妊娠糖尿病の疑いがわかり大事に至らなかった、といった例もあります。
ただし、実際に誰が負担をするかは、これとは別の問題とも考えられます。例えば、乳幼児の外来診療においては、妊婦加算と同額の乳幼児加算がすでに導入されています。しかし、乳幼児加算に対しては、今回のような批判は出ていないようです。
それは、6歳未満の乳幼児に対しては、各自治体による「乳幼児医療費助成制度」で、患者の自己負担が実質的に無料、あるいはかなり低額に抑えられているからだと考えられます。加算された分だけでも、医療費助成を受けることができれば、少子化に逆行するといった指摘はなかったかもしれません。
もちろん、助成を行うにも財源が必要となります。限りある財源をどういった状態の人にどの程度使うか、乳幼児医療費助成制度を含めて議論が分かれるところです。
患者がメリットを感じる必要がある
診療報酬による誘導にも限界があることも指摘されています。診療報酬で評価することで、医療機関をあるべき医療提供体制に誘導することは、一定程度可能かもしれません。しかし、受診時の自己負担額が変わることによって、受診頻度が変わることは複数の研究で明らかになっています。
国民(患者)は、自分たちにとってのメリットを理解しなければ、負担が増えることを避けるために、受診をしない、あるいは妊娠していることを隠す、といった行動をとりかねないと思われます。
診療報酬は、多岐項目にわたる専門的かつ技術的な議論で、専門家同士で行うのはやむをえないでしょう。ただし、決定された診療報酬は、そのまま患者負担につながるものであるため、国民(患者)が、設定された診療報酬の意義を理解する必要があると思われます。
そのためには、国民(患者)は、現在の医療体制が抱える課題を知る必要があるでしょうし、新たな制度導入時には国民(患者)に丁寧な説明が必要となるでしょう。
限りある財源と医療供給体制の中、国民がより安心して医療機関にかかれるよう、現在の診療体制が抱える課題を国民に周知し、議論を深めあっていくことが重要でしょう。
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